研究課題/領域番号 |
23H02453
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 京都産業大学 |
研究代表者 |
横山 謙 京都産業大学, 生命科学部, 教授 (70271377)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | V-ATPase / 回転分子モーター / ATP synthase / クライオ電子顕微鏡 / 単粒子解析 / bioenergetics / ATP合成酵素 / リポソーム |
研究実績の概要 |
膜タンパク質には,生体膜間の水素イオン(プロトン)の濃度勾配による電気化学的ポテンシャル差(プロトン駆動力, proton motive force, pmf)で機能するものが多数ある。応募研究の目的は,プロトン駆動力によりATP合成中のV/A-ATPase,および回転中のVo部分を,クライオEMで構造解析し,プロトン駆動力によるATP合成および回転力発生の分子基盤を解明することである。 V/A-ATPaseとbRの共再構成リポソーム作成の条件検討は完了しており,このリポソームの光照射による連続的なATP合成反応も確認している。本年度では,予備実験としてV/A-ATPaseとbRの共再構成リポソームに光を照射し、リポソームそのものの電顕画像を撮影した。得られたATP合成状態でのクライオEM画像1枚から平均で100-200のV/A-ATPase単粒子画像を抽出した。得られた約200万個のV/A-ATPaseの単粒子画像から,原子モデル構築が可能なV1 部分の3D構造を再構成した。pmf がない状態では、V1部分には ATPが確認できなかったが、pmfがある場合、ATPと思われる密度が、3つの触媒部位上に確認できた。このように、リポソーム上のV/A-ATPaseの高分解能構造解析が可能であることを確認できた
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
前述のように、pmf を付加した状態での V/A-ATPase の構造解析を実施し、ATPが酵素上で合成されていることも確認している。合成中の ATP合成酵素の構造スナップショットを得るという目的は達成された。ただし、撮影枚数の制限から分解能が十分でなく、V1部分でどのような構造変化があるのかは、さらに分解能を向上されたマップからモデルを構築し、pmf 存在下、非存在下のマップを比較する必要がある。また、Vo部分に関しては、現在構造解析を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
より高分解のマップを得るために、引き続き pmf 存在下での V/A-ATPase のクライオ電顕画像の撮影を進める。複数の中間体構造の存在が予想されるため、解析に必要な単粒数は数百万と考えている。必要とされるクライオ電顕画像は、画像の質にもよるが十万枚程度と見積もっており、数日間をかけて撮影する予定である。撮影と平行して単粒子画像解析を進める。特に、Vo部分の構造に焦点を当てた構造解析を行う。pmf によりどのような中間体構造が出現するかを解明し、pmf による連続的な構造変化過程を捉える。 さらに回転中の Voの構造を決定する。単離したVoには,疑似3回対称構造のV1部分が結合していないので,12回対称の回転リング (c12-ring)に対応した12の構造が,回転中のVoの構造からクラス分けされるはずである。回転中のVoから別の構造がクラス分けできれば,プロトン駆動力による回転を引き起こす構造変化をより詳細に議論できる。
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