研究課題/領域番号 |
23H02478
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
小迫 英尊 徳島大学, 先端酵素学研究所, 教授 (10291171)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | STING / 自然免疫 / オルガネラ間輸送 / 近接ビオチン標識 / APEX / BAR / ACBD3 |
研究実績の概要 |
自然免疫分子STINGは、環状ジヌクレオチドと結合すると小胞体からゴルジ体に移行して遺伝子発現を誘導した後、エンドソームさらにリソソームに移行して分解される。このようにSTINGのシグナル伝達はオルガネラ間輸送によって制御されるが、STINGと相互作用する様々なタンパク質がオルガネラ間輸送を制御する分子機構は不明な点が多い。これまでにAPEX2-STING安定発現細胞を膜透過処理してSTINGリガンドを細胞内に導入し、10度で培養することで小胞体からの脱出を阻害した状態で近接ビオチン標識を行うことにより、ゴルジ体局在タンパク質であるACBD3などを見出していた。本年度は近年開発されたDIA (data-independent acquisition)法で質量分析することにより、従来の2倍以上のタンパク質を定量することに成功し、新たなリガンド刺激依存的なSTINGとの相互作用因子の候補を見出した。また外来性でなく内在性の活性化STINGとの相互作用因子を同定するために、hTERT-BJ1細胞に膜透過性STINGアゴニストを加えた後、リン酸化STING抗体を用いたBAR (biotinylation by antibody recognition)法によってリン酸化STINGの近傍タンパク質をビオチン標識した。ビオチン化タンパク質をストレプトアビジンビーズで精製し、ビーズ上でトリプシン消化してDDA (data-dependent acquisition)法による質量分析を行ったところ、1139種類のタンパク質が定量された。この中にはSTING自身だけでなく、STINGをリン酸化するTBK1やACBD3などが含まれていたため、BAR法は有用であると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
DIA法を用いた質量分析の導入により、相互作用タンパク質の候補を従来よりも2倍以上同定することが可能になった。また、抗体を用いた近接ビオチン標識法であるBAR法を確立することにより、外来性でなく内在性の活性化STINGと相互作用するタンパク質の候補を同定できるようになった。BAR法で同定されたタンパク質の中には、活性化STINGとの既知の相互作用因子が複数含まれていたため、STINGのオルガネラ間輸送を制御する新たな相互作用因子が含まれている可能性が期待される。以上のことよりおおむね順調に進展していると評価した。
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今後の研究の推進方策 |
APEX法やBAR法で同定された活性化STINGとの新たな相互作用因子の候補について、STINGのオルガネラ間輸送や下流シグナル伝達への影響をノックダウン実験などによって検討する予定である。またSTINGとリガンド刺激依存的に相互作用するACBD3はSTINGを小胞体とゴルジ体の接触部位に濃縮させる機能を有しており、STINGの小胞体からゴルジ体への移行と下流シグナル伝達に重要な役割を果たしているが、その分子機構は不明な点が多い。そこで近接ビオチン標識法やIP-MS(免疫沈降-質量分析)法などによってACBD3との相互作用因子を網羅的に同定する予定である。
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