研究課題/領域番号 |
23H02532
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 工学院大学 |
研究代表者 |
小山 文隆 工学院大学, 先進工学部, 教授 (40194641)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | ウシ / 反芻動物 / 酵素の不活性化 / 原因アミノ酸の同定 / キメラ体 / 変異体 / 昆虫 / 家畜飼料化 |
研究実績の概要 |
北米での研究により、胎盤哺乳類の祖先が昆虫を主なエサとしていた可能性が示唆されている。このことから、現代の哺乳類が昆虫のキチンを分解できる消化システムを受け継いでいる可能性が考えられる。キチンは多糖で、昆虫や甲殻類など多くの生物の主要な構成成分である。このキチンを加水分解する酵素としてキチナーゼがある。本研究では、酸性キチナーゼ(Chia)に着目し、その活性化メカニズムをウシを含む反芻動物を対象に解明した。 マウスとウシのChiaのcDNAを組み合わせたキメラ体と変異体を構築し、大腸菌で発現させた。そして、合成蛍光基質を用いて、各キメラのキチン分解活性を測定した。 マウスとウシのChiaを組み合わせたキメラ体の解析から、ウシのChiaの低活性化に関与するエクソン5が特定された。さらに、マウスとウシのキメラを用いて、 117番、121番、および128番のアミノ酸残基がウシのChiaの低活性化に関与することが示された。特に、H128R変異を導入すると、ウシのChiaの活性が10倍増加したことが明らかになった。同様に、ヤギとヒツジのChiaも低活性であり、H128Rの変異を導入すると活性が10倍増加した。 胎盤哺乳類の祖先は小型の食虫性動物であり、Chiaはその進化的な記録である。雑食性動物は高いキチナーゼ活性を示し、肉食性動物ではChiaが不活性化または擬遺伝子化されているが、昆虫を摂取する種は高い活性を持つChiaを維持していたと報告されている。ウシ科の動物は128番目にヒスチジンを持ち、不活性化されていました。これらの結果から、肉食動物と草食動物のChiaが遺伝的な変異を受けて低活性分子に進化した一方で、キチンを摂取する種は高い活性を持つChiaを保持していることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では Chia の構造と機能の進化を解明することを目指している。 目的①:重要な家畜である草食性動物のウシの Chia は不活性である。ウシにおける Chia のアミノ酸配列と酵素活性、および主要な草食性動物との進化的関係を明らかにする。また、この不活性化が草食性動物全体で起こっている可能性も検証する。 目的②:現在の食虫性動物であるツパイやメガネザルは 5 種類の Chia パラログを保有している。それら 5 種類の Chia パラログのキチン分解特性を明らかにする。 目的③:食虫性の哺乳類祖先は、5 種類の Chia パラログを保持していた。哺乳類祖先の Chia 配列を推定し、酵素機能を解明する。また、② の生化学的な結果に基づいて、どの Chia パラログが現代の動物に受け継がれたかを推定する。 2023年度の研究では、目的①の ウシの Chia の酵素活性とアミノ酸配列、そして主要な草食性動物での進化との関係を明らかにした。成果は iScience誌に公開された。
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今後の研究の推進方策 |
2024年度は、目的②を推進する。現在の食虫性動物であるツパイやメガネザルは 5 種類の Chia パラログを保有している。それら 5 種類の Chia パラログのキチン分解特性を明らかにする。また、目的③の食虫性の哺乳類祖先の Chia パラログの推定の研究も着手する。 目的②の研究の重要性のため、得られた知見をヒトのChiaパラログに応用し、ヒトのChiaの性質改善も行う。同時に、家畜として重要なニワトリなどの鳥類におけるChiaパラログの性質も明らかにし、哺乳類のChiaパラログとの相違点を検討する。 目的③に関連する哺乳類祖先のChiaパラログの推定のために、Chiaオルソログで不活性化したChi3l1(YKL-40)およびChi3l2(YKL-39)について、その不活性化のプロセスを解明し、現在のChiaとは異なる視点からChia祖先遺伝子を推定する。
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