研究課題/領域番号 |
23H02555
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
辻 かおる 神戸大学, 理学研究科, 准教授 (40645280)
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研究分担者 |
宮下 直 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 教授 (50182019)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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キーワード | 花 / 雌雄差 / 花蜜 / 微生物 / 群集 / 植生 |
研究実績の概要 |
花蜜には、訪花昆虫などにより持ち込まれ、蜜内で増殖した菌類や細菌類が棲んでいる。これまでハマヒサカキ Eurya emarginata の花蜜内微生物の研究を行う中、和歌山県の十数kmほどの距離にある2つの調査地で花蜜内微生物群集が異なっていることが示されている(Ecology 2018)。この二箇所では下層植生が異なり、同時に開花している植物群集が違う事によりこの差異が生まれていると予想した。 そこで、本年度は、これら調査地の一箇所において、ハマヒサカキと、下層植生のなかで花数が最も多く観察されたツワブキの訪花昆虫と花蜜内微生物の調査を行った。訪花昆虫の調査では先行研究同様、オオハナアブやキゴシハナアブ、ツマグロキンバエなどハマヒサカキとツワブキ双方に共通して訪れている昆虫がいる一方、アサギマダラなどツワブキのみで訪花が観察される昆虫がいることが分かってきた。また、微生物に関しては、現在解析をすすめている途中ではあるが、先行研究同様、ハマヒサカキからは、花蜜内細菌Acinetobacter boissieriやA. apis, A. nectarisなどが検出され、また、雌雄の花でAcinetobacter属各種の出現頻度が異なっているという結果が得られた。菌類についてはハマヒサカキとツワブキ双方からMetschnikowia属酵母が検出されたが、ツワブキで検出された頻度は低かった。一方、ツワブキではハマヒサカキでは今のところ検出されていないCutaneotrichosporon属酵母も検出された。これらのことから、微生物はある程度ハマヒサカキとツワブキで行き来しているが、単純にハマヒサカキとツワブキで共通した微生物群集が形成されているのではなく、花形質の違いや、訪花昆虫の違いなどに伴い、両種では異なる花蜜内微生物群集が形成されていることが考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画どおり、ハマヒサカキと下層植生の訪花昆虫や花蜜内微生物の調査を行い、同時期に開花する花間での送粉者の共有や、微生物種の差異などを明らかにした。解析途中ではあるものの、本年度の調査により、単純にハマヒサカキの花蜜内微生物が下層植生から持ち込まれ、下層植生の違いを直接反映している訳では無い可能性がでてきた。本年度の結果に基づき、室内 実験や、野外実験で行う研究計画に多少の変更は加える予定ではあるが、研究の方向性に変化はなく、現在の実験遂行状況および、その成果により、おおむね順調 に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの調査を引き続き行うと同時に、得られた実験・測定結果をもとに、さらなる解析を行うことで考察を深める。また、本年度、新たなハマヒサカキの調査地候補として選定した複数地点においても、下草を始めとした周辺環境、訪花性昆虫、花蜜内微生物の調査を行う予定である。
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