研究課題/領域番号 |
23H02569
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
樋口 重和 九州大学, 芸術工学研究院, 教授 (00292376)
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研究分担者 |
早川 敏之 九州大学, 基幹教育院, 准教授 (80418681)
江藤 太亮 国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター, 精神保健研究所 睡眠・覚醒障害研究部, 特別研究員 (20929822)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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キーワード | 光環境 / 概日リズム / メラトニン / メラノプシン |
研究実績の概要 |
今年度は東アジア集団に対し、光の非視覚作用が用量依存的にどのような反応を示すかを具体的に明らかにすることを目的に実験を行った。メラトニンの光抑制については、欧米で行われた過去の研究との比較を行った。 被験者は目の疾患や色覚異常がなく東アジアにルーツをもった健康な日本在住の大学生・大学院生の計18名(中国人2名、台湾人2名、日本人14名)であった。光の条件は Dimライト(<3 lx), 30 lx, 100 lx, 400 lx, 2000 lxの5条件であった。光曝露の開始時刻は、事前実験で調べた概日リズム位相(Dim Light Melatonin Onset)の約1時間後に設定した。すべての条件で光曝露前の2.5時間はDimライト条件で過ごさせた。光の非視覚的作用として、唾液中メラトニン濃度、瞳孔径、Psychomotor Vigilance Task (PVT)、主観的眠気を測定した。実験は1週間のインターバルをおいて実施した。その間は睡眠習慣の統制を行った。 光によるメラトニン抑制は用量依存的に、照度が上がるにつれ抑制率が大きくなった。瞳孔も同様に照度に依存して縮瞳率も高くなった。主観的眠気及びPVTの成績は照度による有意な主効果は確認されなかった。欧米集団との比較には先行研究で提案されたメラトニン抑制率の予測モデルを用いた。その結果、アジア集団では欧米集団よりも光に対する反応が弱いことが示された。特に、両集団の差は低照度~中照度で大きく、高照度では小さいことがわかった。 また、これらの実験と並行して、非視覚的作用への寄与が大きい網膜メラノプシン神経節細胞を独立して刺激できる光(メタマー光源)の作成も実施した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度は研究計画に従って東アジア人集団を対象に光の非視覚的作用の用量反応関係を測定することができた。夜の光曝露によるメラトニン抑制については、欧米集団を用いた研究から得られた予測モデルと比較することができた。その結果、予想通りアジア集団のメラトニン抑制反応は欧米集団に比べて弱いことが示された。
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今後の研究の推進方策 |
初年度は東アジア集団を対象に夜の光の非視覚的作用の用量反応関係を調べる実験を行い、予測モデルを使って欧米集団の結果と比較を行った。今後は、欧米集団を対象に実験を行う予定である。また、実験で用いる光についても、非視覚的作用への寄与が大きい網膜メラノプシン神経節細胞を独立して刺激できる光(メタマー光源)を用いた実験も行うことで、より詳細に光感受性の民族差について検討を進める予定である。
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