研究実績の概要 |
本研究では、マウスの生体脳内で個々のシナプスの活動や強度を大規模かつ定量的にモニターするための技術基盤を確立し、その技術基盤を用いて学習の習熟における脳内局所回路の時空間的な変化を分子のレベルで解明することを目的とする。2023年度は、生体脳内で個々のシナプスの活動や強度を大規模かつ定量的にモニターするための技術基盤の開発を行った。これまでに研究代表者が開発した生体脳内ゲノム編集・分子標識技術SLENDR法およびvSLENDR法 (Mikuni et al., Cell 2016; Nishiyama*, Mikuni* et al., Neuron 2017)を駆使して、樹状突起スパインでの神経活動を高感度かつ高S/N比でイメージングするためのスパインカルシウムセンサーを開発した。これにより、スパイン分子の内在的な発現量を変化させることなく、スパインでのカルシウム上昇を選択的かつ高感度にイメージングできることが期待される。また、空間的に複雑な拡がりを示す樹状突起をカバーする高速ボリュームイメージングを行うために、空間光変調器を用いて2光子レーザーをベッセルビーム化することに成功した。これにより、脳内1細胞の多数のシナプスでの活動をモニターできることが期待される。さらに、個々のシナプスの強度はスパイン膜表面のAMPA型グルタミン酸受容体(AMPAR)の量が指標となるので、AMPARのサブユニットであるGluA1やGluA2をSLENDR/vSLENDR法を用いて高感度な化学タグで標識・可視化するためのプローブを作製した。
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