研究課題
申請書に記載した計画に従って、キラルオキサゾリンと配位性官能基をオルトベンゼンで架橋したキラル三座配位型AZADOの合成を行った。N-Boc-ブロモ-L-フェニルアラニンを出発物質として、ベンズイミダゾールの直接的C-Hアリール化による配位性官能基の導入を試みたが、本反応が効率的に進行する条件の同定には至らなかった。そこで、異なる合成経路を検討した。すなわち、アリールブロミドをホルミル化した後、ジアミンとの縮合と酸化によって配位性官能基を導入した。その後、アミノアルコールへと変換し、アザアダマンタンカルボン酸塩化物との縮合、オキサゾリン環の構築、Ns基の脱保護とアミンのニトロキシルラジカルへの酸化を行い、数種の新規キラル三座配位型AZADOの合成を完了した。合成した新規キラル三座配位型AZADOのラセミ第二級アルコールの酸化的速度論的光学分割(OKR)に対する活性を評価した。モデル基質としてトランス体とシス体のフェニルシクロヘキサノールを用いた。トランス体ではいずれの触媒においても反応速度が遅く、低い変換率に止まったが、エナンチオ選択性の発現が確認された。シス体では、いずれの触媒においてもエナンチオ選択性の発現は確認できなかった。さらに条件最適化を行い、触媒3 mol%, 銅塩6 mol%, 塩基12 mol%を用いる条件を最適条件とした。最適条件を用いて基質を検討した。フェニル基上に置換基をもつトランス-2-(ベンゾイルオキシ)シクロヘキサノール基質で最も良好な変換率とエナンチオ選択性が得られ、その反応速度比は3.43であった。不斉アジリジン化反応の開発については、シリルオキシベンゾフラン基質に対して、銅触媒を用いる条件が有効に機能することを見出した。
2: おおむね順調に進展している
申請書に記載したとおりの設計で、数種のキラルオキサゾリンと配位性官能基をオルトベンゼンで架橋した新規キラル三座配位型AZADOの合成を完了した。また、これまで報告者らは専らラセミ第二級アルコールの酸化的速度論的光学分割を検討してきたが、本研究では計画通り不斉アジリジン化反応の開発に向けた萌芽的知見を得ることが出来た。
当初設計したキラルオキサゾリンと配位性官能基をオルトベンゼンで架橋した三座配位型AZADOでは、現在のところ高いエナンチオ選択性を発現する触媒の獲得には至っていない。よって、2年目は、引き続き上記触媒の構造最適化に取り組むと同時に、さらにキラル二座配位子を組み合わせる条件も検討する予定である。銅触媒を用いるシリルオキシベンゾフランのアジリジン化においては、既知のキラル二座配位子を中心に配位子の構造展開を行い、高いエナンチオ選択性を発現する配位子の獲得を目指す。
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