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2023 年度 実績報告書

新規光学活性分子骨格としてのクネアンの合成に関する研究

研究課題

研究課題/領域番号 23H02605
配分区分補助金
研究機関京都大学

研究代表者

松原 誠二郎  京都大学, 工学研究科, 教授 (90190496)

研究期間 (年度) 2023-04-01 – 2026-03-31
キーワードキュバン骨格編集 / クネアン / セミブルバレン / ホモキュバン / ホモクネアン / ビスホモキュバン / 水熱反応
研究実績の概要

正立方体炭化水素キュバンはベンゼン生物学的等価体として、既存のベンゼン環構造保有の医薬品分子においてベンゼンと置換することで、疎水性の緩和・代謝耐性の強化などの薬理効果改善の検討に用いられている。それに加え、平面構造であるベンゼンを三次元方向に展開できるカゴ型分子である点が、薬品分子に複雑性を与える、いわゆるescape of flatlandの薬理分子設計の概念にも合致している。本研究では、この複雑性の概念に「光学活性」を与えることを目的として研究を計画した。キュバンはOh対称性分子であり、この骨格に光学活性を与えるのは、サイト選択的に三つの置換基を導入するという煩雑な分子変換が必要となる。そこで、大きく発想を転換し、キュバンという正立方体骨格を歪ませ非対称化するという合成戦略をとることとした。この概念に基づき、キュバンからクネアン(二個の三員環・二個の四員環・二個の五員環からなる六面体)への非対称化により不斉分子とした。この異性化を利用し、セミブルバレンも合成することができた。また感拡大による非対称化も利用し、ホモキュバン・ビスホモキュバン・ホモクネアンの合成を次々と実現し、報告することができた。この一連の反応は、キュバンを出発とする関連カゴ型分子の網羅的合成を実証することができ、新規な不斉カゴ型分子の選択的合成の新規な手法として示すことができた。この手法を我々は「キュバン骨格編集法」と名付け、その概念も発表することができた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

キュバンからクネアンへの触媒的不斉異性化を実現したことがきっかけで、本研究を展開した。その後、クネアンからセミブルバレン、そしてホモクネアンへの立体特異的異性化を見いだした。また、キュバンからホモキュバン、そしてビスホモキュバンへの選択的異性化も見いだした。これらは、すべて新規触・反応条件による反応の発見である。このようにカゴ型分子群の合成反応に関して大きなインパクトを与えることができた。

今後の研究の推進方策

今後の推進は、クネアン骨格からの新規な異性化反応の発見を第一としている。また、これらの骨格編集法においては、クネアンの絶対構造を立体特異的に保持することができる。したがって、光学活性クネアンの入手が鍵となる。既に、我々は、クネアンへの触媒的不斉合成に成功しているが、より実際的な大量入手法の開発が鍵となる。そこで、光学分割を検討している。これまで、クネアンの光学分割を試みた例はない。我々は、不斉補助基の利用、そして酵素反応などを駆使して、この問題を解決する予定である。

  • 研究成果

    (13件)

すべて 2024 2023 その他

すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 6件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (2件) (うち招待講演 1件) 図書 (3件) 備考 (1件)

  • [国際共同研究] Queensland University(オーストラリア)

    • 国名
      オーストラリア
    • 外国機関名
      Queensland University
  • [雑誌論文] How to Set the “Chirality” of Polyhedral Small Molecule Hydrocarbons: Decoration and Editing of Cubane Skeleton2024

    • 著者名/発表者名
      Takebe Hiyori、Matsubara Seijiro
    • 雑誌名

      European Journal of Organic Chemistry

      巻: 27 ページ: 1~8

    • DOI

      10.1002/ejoc.202300891

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Scaffold Editing of Cubanes into Homocubanes, Homocuneanes via Cuneanes2024

    • 著者名/発表者名
      Takebe Hiyori、Matsubara Seijiro
    • 雑誌名

      Chemistry - A European Journal

      巻: 30 ページ: 1~4

    • DOI

      10.1002/chem.202303063

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Constitutional isomerization of cubane to semibullvalene via cuneane in hot water2024

    • 著者名/発表者名
      Takebe Hiyori、Umemura Tomomi、Matsubara Seijiro
    • 雑誌名

      Chemistry Letters

      巻: 53 ページ: 1~3

    • DOI

      10.1093/chemle/upad010

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Decoration on Cubane with an Awareness of Chirality: Development of Substituted Cubane Syntheses2023

    • 著者名/発表者名
      Matsubara Seijiro、Takebe Hiyori
    • 雑誌名

      Synthesis

      巻: 56 ページ: 16~28

    • DOI

      10.1055/a-2124-3823

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Directed Metalation of 1-Cuneanecarboxamide: Simple Route to 1,2-Disubstituted Cuneanes2023

    • 著者名/発表者名
      Takebe Hiyori、Matsubara Seijiro
    • 雑誌名

      Chemistry Letters

      巻: 52 ページ: 358~360

    • DOI

      10.1246/cl.230101

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Machine Learning that Proposes Reaction Conditions and Yields for Wittig-type Methylenation of Aldehydes with Bis(iodozincio)methane in a Flow-microreactor2023

    • 著者名/発表者名
      Maruoka Taiyo、Yada Akira、Sato Kazuhiko、Matsubara Seijiro
    • 雑誌名

      Chemistry Letters

      巻: 52 ページ: 397~399

    • DOI

      10.1246/cl.230133

    • 査読あり
  • [学会発表] デジタル有機合成での分子創生2023

    • 著者名/発表者名
      松原誠二郎
    • 学会等名
      第72回高分子学会
    • 招待講演
  • [学会発表] クネアンの分子編集2023

    • 著者名/発表者名
      竹邊日和、松原誠二郎
    • 学会等名
      第123回有機合成化学協会シンポジウム
  • [図書] 有機分子設計のための逆合成自動化の手法(マテリアルズインフォマティクス・量子コンピュータおよび自然言語処理と自律型実験システムを活用した次世代材料開発)2024

    • 著者名/発表者名
      竹邊日和、松原誠二郎
    • 総ページ数
      5
    • 出版者
      株式会社Andtech
    • ISBN
      978-4-909118-69-1
  • [図書] 有機合成のデジタル化(マテリアル・機械学習・ロボット、現代化学増刊48)2024

    • 著者名/発表者名
      竹邊日和、松原誠二郎
    • 総ページ数
      5
    • 出版者
      東京化学同人
    • ISBN
      978-4-807913-48-0
  • [図書] AIによる逆合成解析の経路探索の手法と活用(ケモインフォマティクスにおけるデータ収集の最適化と解析手法)2023

    • 著者名/発表者名
      竹邊日和、松原誠二郎
    • 総ページ数
      6
    • 出版者
      技術情報協会
    • ISBN
      978-4-86104-944-6
  • [備考] Organic Reaction/松原研究室

    • URL

      https://matsubaraseijiro2e.wixsite.com/organic-reaction

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公開日: 2024-12-25  

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