研究課題/領域番号 |
23H02617
|
配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 公益財団法人微生物化学研究会 |
研究代表者 |
柴崎 正勝 公益財団法人微生物化学研究会, 微生物化学研究所, 所長 (30112767)
|
研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
|
キーワード | 協奏機能型触媒 / アルキルニトリル / 触媒的不斉合成 |
研究実績の概要 |
本研究では,これまで得られた多点認識概念による協奏機能型不斉触媒の特徴を最大限に活用した新たな触媒の創製に加え,触媒の反応促進機構および立体選択性発現機構を計算化学や種々の分光学的手法を用いた包括的なメカニズム解析により明らかとし,新たな触媒概念の礎となる新知見を積極的に見出すことを目的としている。難易度が高く敬遠されやすい反応を積極的に選定することで,協奏機能型触媒による強力な反応促進機構の立証を掲げている。 2023年度はアルキルニトリルを直接炭素求核剤とする触媒的不斉付加反応に関して進展があった。すなわち独自に設計したピンサー型ニッケル錯体を触媒とすることでα位が塩素で置換されたクロロアセトニトリルを直接的触媒的不斉Mannich型反応が良好な収率・立体選択性にて進行することを見出した。成績体中の塩素原子は化学変換の足がかりとして有用であり,種々の光学活性ビルディングブロックが効率的に得られた。基質は比較的不安定であると想定されるが,オリゴマー化などは観測されなかった。触媒のニトリル選択的な基質の活性化が実現する穏和な反応条件が本反応成功の鍵と考えられる。さらにフルオロアセトニトリルを用いた際も付加反応が進行することを見出しつつあり,次年度は本系の完成を目指す。 一価銅を用いたソフトLewis酸/ハードBronsted塩基協奏機能型触媒系では,クロモン系天然物頻出骨格の触媒的不斉合成に進展があった。以前の触媒系ではシリル基で活性化された求核種の利用が反応進行に必須であり,その反応の原子効率に課題を残していた。今年度は触媒系の徹底的な再検討を行い,クロマノンラクトンを求核種前駆体とする原子効率100%の直接的不斉共役付加反応の開発に成功した。反応成功の鍵は触媒量のホウ素添加剤の同定であった。量子化学計算により本添加剤は付加反応後の触媒再生工程を加速すると示された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請書記載のマイルストーンをほぼ達成したため
|
今後の研究の推進方策 |
キラルピンサー型錯体を触媒とするフルオロアセトニトリルの触媒的不斉付加反応の完成を目指す。反応条件下触媒が失活することが確認されているため,少量の水や酸性成分の存在を疑い各種添加剤を検討していく。 またソフトLewis酸/ハードBronsted塩基協奏機能型触媒系ではクロモン系天然物以外の生理活性天然物の主骨格形成を狙い,有用化合物の単工程触媒的不斉全合成の達成により本方法論の実践的有用性を示していく。
|