研究課題
MORの細胞内側に作用するナノボディNb39およびGαサブユニット改変体であるminiGを調製した上で、両蛋白質のリジン残基をAlexa蛍光標識して、mオピオイド受容体(MOR)と混合してゲルろ過カラムにアプライするFSEC解析を行った。その結果、MORの溶出体積に520 nmの蛍光の蛍光が観測されたことから、調製したNb39、miniG、およびMORが複合体を形成していることが示された。そこで次に、メチオニン選択標識MORの1H-13C HMQCスペクトルを、MOR-DAMGO(完全作動薬)-Nb39およびMOR-DAMGO-miniGの三者複合体が形成される条件で観測した。その結果、MOR-DAMGO二者複合体とはシグナルの化学シフトおよび強度が顕著に異なるスペクトルが観測された。TM5に位置するM245のシグナルは、mini結合状態ではNb39結合状態と比べて1H高磁場シフトしていた。Nb39およびGタンパク質が結合したMORの結晶構造および極低温電子顕微鏡構造を比較すると、MORのTM5に位置するM245は、Gタンパク質結合状態では、Nb39結合状態とくらべて、TM5中央のkinkを起点に細胞内側が、GPCR中央に位置するTM3に近づいており、これと対応して、Gタンパク質結合状態ではM245とF241の側鎖の位置がNb39結合状態よりも近づいている。以上より、M245の1H化学シフトは、TM5の細胞内側の構造をよく反映すると結論した。Gタンパク質をより強く活性化するoliceridineが結合した状態では、M245のNMRシグナルは1H高磁場シフトしていた。以上より、Gタンパク質バイアス状態では、Gタンパク質結合状態と類似した、TM5がGPCR中央に近寄った構造が増加していると考えた。
2: おおむね順調に進展している
本研究の当初目標では、Gタンパク質もしくはGタンパク質改変体 (mini-Gi, nanobody) が過剰量存在する状態において、MORのNMRスペクトルを取得すること目指していた。これと対応するように、本年度は、Nb39およびminiGを調製して、FSECで複合体形成を確認した上で三者複合体における1H-13C HMQCスペクトルを取得して、M245の1H化学シフトがTM5の細胞内側の構造をよく反映することを示しこれにより、Gタンパク質バイアス状態では、Gタンパク質結合状態と類似した、TM5がGPCR中央に近寄った構造が増加するという新規の知見を得た。したがって、おおむね順調に進展していると考えてた。
MORのリガンド結合部位近傍の動的構造の解析:リガンド結合部位近傍に位置する複数の残基にメチオニン残基を変異導入して、作動薬および遮断薬 (naloxone) 結合状態のメチオニン残基選択標識MORの1H-13C HMQCスペクトルを取得して、導入したメチオニン残基のNMRシグナルを観測する。作動薬および逆作動薬が結合した状態において、ALM および Gタンパク質の存在によりこれらのシグナルがどのように変化するかを調べる。
すべて 2024 2023
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (1件)
Chemical Science
巻: - ページ: -