研究課題
病原性Th17(pTh17)細胞は様々な自己免疫疾患の原因となるが、その分化制御機構には不明な点が多く残っている。私たちはこれまでに転写因子JunBと解糖系代謝産物ホスホエノールピルビン酸(PEP)の相互作用がpTh17細胞の遺伝子発現制御において重要な役割を果たすことを見出している。本研究では、JunBとPEPによるpTh17細胞の遺伝子発現制御機構を解明することを目的とする。本年度は、JunB欠損T細胞のATAC-seqによるクロマチン構造解析とCUT&RUNによるヒストン修飾解析を行い、JunBがpTh17細胞分化において、Il17aやIl23rなどの病原性関連因子のエンハンサー活性化を促進することを見出した。JunBは相互作用因子であるSWI/SNFクロマチンリモデリング複合体およびヒストンメチル化酵素の標的エンハンサー領域の結合に必要であることも明らかにした。さらに、PEPがJunBによるIl23r遺伝子座のエンハンサー活性化を抑制することが示された。一方、JunBはpTh17細胞において、Runx, Nfkb, Ets, Nr4などの転写因子の発現の抑制およびそれら遺伝子座のクロマチン閉鎖状態の維持に必要であった。また、JunB欠損pTh17細胞では、これらの転写因子の発現上昇に加えて、その標的であるTh1およびTh2細胞に関連する遺伝子の発現上昇が観察された。以上の結果はJunBがpTh17細胞分化におけるクロマチン制御に必須の役割を担うことを示すものである。さらに、独自に開発したdTAG-JunBマウスを用いて、dTAGリガンド処理によるJunBの急速分解が成熟pTh17細胞における炎症関連遺伝子の発現不全につながることを示唆する結果も得ている。
2: おおむね順調に進展している
当初の予定通り、PEPとJunBによるpTh17細胞分化のエピジェネティック制御機構を明らかにした。また、dTAG-JunBマウスを用いた成熟pTh17細胞におけるJunBの機能解析も行うことができた。
JunB-dTAGマウスを用いて成熟pTh17細胞におけるJunBの役割と標的遺伝子発現制御メカニズムを明らかにする。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 3件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 3件)
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