研究課題/領域番号 |
23H02643
|
配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
内田 康雄 広島大学, 医系科学研究科(薬), 教授 (70583590)
|
研究分担者 |
三枝 大輔 帝京大学, 薬学部, 准教授 (90545237)
|
研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
|
キーワード | 薬物分布の脳内部位差 / 異なる中枢関門 / qGAP法 / トランスポーター |
研究実績の概要 |
2023年度は、独自開発した網羅的絶対定量プロテオミクス(qGAP法)によって、3関門の薬物輸送担体の種類と絶対発現量を網羅的に解明することを目的とした。各関門に選択的に発現する薬物トランスポーターを同定するため、脳から脳血管内皮細胞(BBB)、クモ膜上皮細胞(BAB)および脈絡叢上皮細胞(BCSFB)を単離し、網羅的に薬物トランスポーターを探索かつ定量し、3関門における薬物トランスポーターの種類と量を解明した。絶対発現量は、単位細胞膜(1 ug protein)あたり何mole、という単位だけでなく、脳1個あたり何mole、という単位で算出することによって、3関門間における各トランスポーターの寄与度の違いを理解できるようにした。血液脳関門に新規に有機アニオンを輸送するトランスポーターが発現することを同定し、そのタンパク質発現量は、薬物脳移行性制御に寄与するP糖タンパクやBCRPと同程度であったことから、有望な新規トランスポーターであると考えられた。血液クモ膜関門において、organic cation transporter 2(OCT2)が高発現していた。脳実質、血液脳関門および血液脳脊髄液関門と比較した結果、oct2は、血液クモ膜関門に選択的に高発現するトランスポーターであることが示された。アルツハイマー病、進行性核上性麻痺およびシヌクレイノパシー患者では、脳内の病変部位が病態の進行に伴って伝播していく。これらの患者の剖検脳組織を用いた高深度プロテオミクス解析の結果、脳の部位ごとに病態のタンパク質分子メカニズム(どのようなタンパク質群が活性化・抑制されているか)が異なる結果を予備的に得た。これは、脳の部位ごとに、薬理作用の異なる薬を送達することが重要であることを示唆しており、異なる関門の輸送機構の違いを利用することが有用な手段となりうる。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の予定を達成できたことに加えて、中枢疾患の患者剖検脳を用いた定量プロテオミクス解析も実施し、同じ疾患でも部位ごとに異なる病態分子機構であることを示し、部位ごとに、薬理作用の異なる薬を適用することが必要であることを見出したこと、及びその薬を予測できたため。
|
今後の研究の推進方策 |
同定したトランスポーターのノックアウトマウスを用いて、機能的な検証を実施する。
|