研究課題/領域番号 |
23H02648
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
荒川 大 金沢大学, 薬学系, 准教授 (40709028)
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研究分担者 |
藤田 光 金沢大学, 薬学系, 助教 (40782850)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | OAT2 / 小胞体 / 肝臓 / UDP-グルクロン酸転移酵素 / 薬物相互作用 |
研究実績の概要 |
本年度は小胞体輸送体として予備的な結果が得られていた有機アニオントランスポーターOAT2を中心とした研究をおこなった。ヒト肝細胞における薬物の小胞体代謝にOAT2が関与することを示すため、ヒト肝がん由来HepaRG細胞を用い、OAT2のノックダウン試験を行った。薬物代謝試験を行った結果、OAT2の基質ジドブジンのグルクロン酸抱合体の生成量がOAT2のノックダウンにより低下した。一方、OAT2は小胞体のみならず細胞膜にも局在するアイソフォームが存在する。そこで小胞体代謝物量を細胞内取り込み量で除することで、細胞内に取り込まれたのちのOAT2の機能解析を行った。その結果、ジドブジンの細胞内取り込み量に変化は観察されず、代謝物量を取り込み量で除した代謝活性はOAT2のノックダウンにより優位に低下した。このため、OAT2はジドブジンの小胞体膜透過に関与することで、小胞体代謝反応に関与することが示唆された。さらに、OAT2の臨床における重要性を探索するため、薬物相互作用にOAT2が関わるかについて調べた。ジドブジンは臨床においてバルプロ酸と併用すると血中濃度が上昇する。小胞体を含むヒト肝由来ミクロソーム及びHepaRG細胞を用いてUGT阻害活性を評価したところ、ヒト肝ミクロソームにおける阻害活性は臨床血漿中濃度より10倍以上高い濃度でのみ見られ、UGTの阻害では相互作用を説明できなかった。一方、HepaRG細胞におけるジドブジンのグルクロン酸抱合反応はバルプロ酸の添加により濃度依存的に低下し、その阻害親和性はバルプロ酸の臨床血中濃度と近い値となった。このため、バルプロ酸はOAT2の阻害を介してジドブジンの血中濃度を上昇させていることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
OAT2がジドブジンなどの薬物の小胞体膜透過に関わることで薬物代謝反応に関わることを示した。さらに、OAT2を介した薬物相互作用の例として、ジドブジンとバルプロ酸の飲み合わせを示すことができた。
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今後の研究の推進方策 |
OAT2が薬物の小胞体膜透過に関わっているかを定量的に示すため、小胞体コンパートメントを組み込んだPBPKモデルにより検証を行う。また、OAT2以外の小胞体輸送体についても探索を行う。
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