研究実績の概要 |
現在、マラリアの治療はアルテミシンと他の抗マラリア薬(パートナー薬剤;メフロキン, ピペラキン, ルメファントリン等)を用いた併用療法(Artemisinin Combination Therapy, ACT)を第一選択として行われている。しかし、近年これらの薬剤に対する耐性が地球規模で拡散し、治療効果の低下が強く懸念される状況にある。一方、これまでに申請者は独自に開発したセントロメアプラスミドを用いて、従来法とは一線を画す新規薬剤耐性遺伝子迅速同定法の確立に成功した。またこれと並行し東南アジア流行地においてフィールド活動を行い、未知の耐性遺伝子を有するアルテミシニン・ルメファントリン耐性原虫を株化した。そこで本研究では獲得した多剤耐性原虫より独自に開発した手法を用いてアルテミシニン及びルメファントリン耐性遺伝子を同定する。今年度は同定したアルテミシニンおよびルメファントリン耐性原虫を大量に培養し、これよりゲノムDNAを精製した。次にこれを限定分解し、巨大DNA断片を調製後、セントロメアプラスミドに連結した。連結後のDNA断片を電気泳動にかけ、実際に効率よくDNAが連結されていることを確認した。続いて高度に細胞周期を同調した熱帯熱マラリア原虫を準備し、これに前述のDNA断片を連結したセントロメアプラスミドを導入した。導入後、薬剤選択をかけ、目的とする遺伝子ライブラリーを構築した。現在、このライブラリーを対象に薬剤耐性遺伝子のスクリーニング作業を行なっている。
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