研究実績の概要 |
本研究課題は、糖質加水分解酵素を利用して真菌細胞壁を構成する様々な多糖類に対する特異的結合タンパク質の創出を目指すものである。2023年度には、多くの病原性真菌の細胞壁に共通して存在するβ-1,3-グルカンを特異的かつ高感度に検出する目的で、糖質加水分解酵素の改変体を設計し、大腸菌を用いて発現させた。様々な酵素に由来する改変体の機能を評価し、真菌由来β-1,3-グルカンに対し強い結合を示す候補を選出した。得られた一部の候補タンパク質を、各種機能性ペプチドタグと融合し、β-1,3-グルカン存在下でのみ発光を示すホモジニアス測定法を構築した。最も結合活性の高い改変型酵素を用いた測定法では、pg/mLレベルのβ-グルカン定量が可能となり、カンジダ菌の培養上清からもβ-1,3-グルカンシグナルを検出することに成功した。また、特定の病原性真菌細胞壁に存在するα-1,3-グルカンに対する特異的結合タンパク質を獲得するために、複数の糖質加水分解酵素の改変体を設計し、大腸菌で発現させた。一部の改変体が真菌α-1,3-グルカンに対する結合を示したため、そのうち最も強い結合活性を持つ改変体の機能を詳細に解析し、この改変体がα-1,3-グルカン以外の真菌多糖とは結合しないことを確認した。この候補タンパク質に、各種機能性ペプチドタグを融合することで、α-1,3-グルカン特異的な検出法を構築するに至った。いずれの候補タンパク質も標的多糖に対する結合特異性が高いため、真菌の病原性を左右する細胞壁多糖の構造解析に適したタンパク質プローブとしての応用が期待できる。
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