研究課題/領域番号 |
23H02727
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
鈴 伸也 熊本大学, ヒトレトロウイルス学共同研究センター, 教授 (80363513)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | HIV-1 / HTLV-1 / 細胞間伝播 / M-Sec |
研究実績の概要 |
本研究の目標は、HIV-1とHTLV-1に共通する新規制御戦略としての細胞間伝播阻止法の確立である。その実現に向け、以下の解析を進めている:(1)宿主タンパク質M-Secが伝播を促進するメカニズムの詳細な解明、(2)感染マウスモデルやHTLV-1関連脊髄症(HAM/TSP)患者の検体の解析を通して、M-SecがHIV-1とHTLV-1の細胞間伝播をどのように促進し、それが伝播全体の中でどれくらい重要なのかの明確化。 まず、M-SecがHTLV-1の細胞間伝播を促進するメカニズムの一つとして、ウイルス構造タンパク質Gagの多量体化の促進を報告してきたが、HIV-1についても同じである事を見出した。Gagの多量体化はウイルス粒子の形成に必須のステップである事から、M-SecがHIV-1/HTLV-1のウイルス粒子形成に関わっているという、新たな可能性が強く示唆された。Gagの多量体化にはPIP2などのリン脂質への結合が必要な事、一方、M-Sec自身もPIP2へ結合する事から、現在、PIP2などのリン脂質が、M-SecによるGagの多量体化促進、その後のウイルス粒子形成の促進に関わっているのではないかと予想し、その検証実験を行っている。 並行してHAM/TSP患者の感染細胞を用いた解析も進めた。M-Sec阻害剤の添加により感染細胞中のGagの多量体化の減弱を認めるなど、上述のin vitroの解析と良く一致する結果が得られた。M-SecはHTLV-1の転写因子TaxによりCD4陽性T細胞内で異所性に発現誘導される事を報告してきたが、この発現誘導は一過性ではなく長期間持続する事、そしてその発現レベルはM-Secを生理的に発現する単球と比べて遜色のない事を新たに見出した。現在、TaxがM-Secを発現誘導するメカニズムの解明および他のTax標的遺伝子を含めた比較解析を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
M-Sec がHIV-1およびHTLV-1の細胞間伝播を促進するメカニズムについては、PIP2などのリン脂質を通した、新たな視点からの解析に発展してきている。実際、予備的な解析では、PIP2除去によりM-SecのGagへの効果が減弱する事を見出している。これらin vitroだけでなく、感染者内の感染細胞を用いた解析も重要であり、今年度はHAM/TSP患者の感染T細胞の解析が予定通り進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
研究は当初の計画通りに進んでいるので、このまま継続する。M-SecがHIV/HTLV-1の細胞間伝播するメカニズムの解明については、Gagの多量体化を中心に、PIP2の関与を具体的に明らかにする。そのためにGagおよびM-Secの変異体を用いた解析、PIP2の細胞内局在解析などを予定している。感染マウスモデルの解析も進め、HAM/TSPの解析では、M-Sec下流エフェクター分子候補に対する阻害剤を用いた解析などを予定している。
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