研究課題
滞在型メモリー様CD8T細胞(TRM-like CD8 TIL)は高い抗腫瘍活性を持ち、その頻度は良好な予後や免疫療法への感受性とも相関する。しかしながら、TRM-like CD8 TILを効率よく誘導可能なマウスモデルが存在しないこともあり、 TRM-like CD8 TILがいかにして腫瘍内で誘導されるのかはわかっていない。我々はへん研究に先駆け、マウス卵巣がん自然発症モデルにて非常に効率よくTRM-like CD8 TILが誘導されることを見出してきた。本モデルを用い、発症マウスの腫瘍から分離したCD8T細胞のシングルセルRNAシーケンスを実施した。現在、同一腫瘍内のCD8 TIL(分化前)およびTRM-like CD8 TIL(分化後)の遺伝子発現を解析中である。また、同一モデルにて、TRM-like CD8 TILの誘導が確認された卵巣がん組織を用い、1細胞解像度の空間トランスクリプトーム(stereo-seq)を実施した。現在、分化部位の間質にてCD8 TILおよびTRM-like CD8 TILと相互作用している細胞集団の解析を進めている。我々はヒト頭頸部がん組織の免疫組織化学にて、複数種のTRM-like CD8 TIL分化部位を同定している。そこで、TRM-like CD8 TILの分化部位が明確に確認できた検体を用いて1細胞解像度の空間トランスクリプトーム(CosMx)を実施した。この組織はエフェクタータイプのTRM-like CD8 TIL、もしくはメモリータイプのTRM-like CD8 TILが誘導されると予想されている異なる分化部位を含んでおり、それぞれの分化部位にて誘導されたTRM-like CD8 TILが異なる性質を有すること、また各部位にて異なる細胞集団と相互作用していることがわかった。現在、相互作用する細胞集団の機能解析を進めており、各部位にてTRM-like CD8 TILの分化誘導に関わった因子の特定を目指している。
2: おおむね順調に進展している
研究は概ね順調に進んでいる。
申請書の研究計画・方法に沿って研究を遂行する。まずは現在解析を進めているシングルセルRNAシーケンス、空間トランスクリプトームの解析を進め、TRM-like CD8 TIL分化誘導に関与する因子の同定を目指す。その後、卵巣がんでも同様の解析を進め、臓器間にてTRM-like CD8 TIL分化誘導に関わる因子の差が見られるかを検討する。また、腫瘍内における特定因子の発現を誘導し、TRM-like CD8 TIL分化誘導が可能かどうかを検討する。
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すべて 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 2件、 査読あり 5件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 1件、 招待講演 2件) 備考 (1件)
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