研究課題/領域番号 |
23H02750
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
齊藤 康弘 慶應義塾大学, 政策・メディア研究科(藤沢), 特任准教授 (30613004)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 細胞極性タンパク質 |
研究実績の概要 |
がん細胞は生体内において内因性と外因性の細胞ストレスに曝されている。このような過酷な細胞ストレス下においてもがん細胞は増殖できることから、がん細胞は様々な細胞ストレスに適応し、増殖しているといえる。これまでに多くの研究者によって個々の細胞ストレス、例えば、低栄養ストレス、低酸素ストレス、低pHストレスなど個々の細胞ストレスに対するがん細胞の応答分子機序に関する研究は行われてきたかが、実際の生体内では個々の細胞ストレスが複合的に作用しており、その複合的細胞ストレスの中でがん細胞は適応し、増殖している。このような実際の生体内を模倣した複合的細胞ストレスに関する研究はこれまでにない。我々は細胞の方向性を制御する細胞極性タンパク質が乳がん細胞において栄養ストレス下における細胞増殖に重要であることを明らかにし、そして、近年では細胞極性タンパク質ががん細胞の低pHストレス適応にも関与していることが示唆され、細胞極性タンパク質ががん細胞の複合的な細胞ストレス適応において鍵となる分子である可能性が示唆された。よって、本研究ではがん細胞の複合的ストレス適応における細胞極性タンパク質の役割を明らかにすることを目的として、近年見出してきたpHストレスにおける細胞極性タンパク質の病態生理学的役割の解析を行った。本研究期間では測定結果が不安定であった細胞内pHの測定を絶対定量にて行う方法を検討し、細胞極性タンパク質などの分子が細胞内pHを制御していることを明確に示した。また、メタボローム解析により細胞内pHの変化により、一部の代謝物が低pH依存的に大きく変化することを発見し、細胞内pHストレスと代謝の新たな生物学的関連を見出すことに成功している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は研究計画に従い、細胞極性タンパク質が 細胞内pHに与える影響を明確に示すこと、そして、細胞内pHの測定法を乳がん細胞で確立することに従事した。細胞内pHの測定に関してはpH応答蛍光指示薬を使用した方法を用いて、検量線を使った細胞内pHの絶対定量法を確立することが出来た。また、確立した細胞内pH測定法を利用し、細胞極性タンパク質であるLLGL2が細胞内pHを制御していることを明らかにした。さらに、低pHストレス下における乳がん細胞のメタボローム解析を行ったところ、予想しなかったことに低pH依存的に細胞内濃度が変化する代謝物を見出すことに成功しており、代謝と細胞内pH制御の新たな分子連関が明らかになった。
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今後の研究の推進方策 |
本研究計画は予定通り順調に進んでおり、また、予想外の結果も見出すことが出来たことから、申請内容に加え、代謝物と細胞内pHの分子連関の機序を明らかにするとともに、代謝物による細胞内pHの変化、そして、pHによる代謝物の変化ががん細胞の低pHストレス適応における病態生理学的役割の解明を試みる予定である。
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