研究課題
骨肉腫は、骨芽細胞系統の細胞ががん化することで発症すると考えられているが、発がんに寄与するドライバー遺伝子となる共通な遺伝子変異や融合遺伝子は同定されておらず、その発症機序は不明である。本研究課題では、骨肉腫患者由来ゼノグラフト(PDX)と細胞株(PDC)を樹立し、その性状解析を行うことで、骨肉腫の発症機序の分子基盤を理解することを目的とし、新たな治療標的候補分子を提示することを目指す。同意が得られた骨肉腫患者の手術検体の残余をNSGマウスの背部皮下に移植することで、骨肉腫PDXを樹立し、PDX継代時に腫瘍の一部を単離、破砕することで、骨肉腫PDCを樹立した。令和5年度は、4株の骨肉腫PDXおよびPDCの樹立に成功した。樹立したPDXを対象にscRNA-seq解析を実施したところ、腫瘍内部において分化度の異なる複数の細胞集団が存在することが示された。骨肉腫PDXにおいて腫瘍内部の分化度の差異をもたらす原因遺伝子を同定するために、骨肉腫PDCなどを対象にレンチウイルスを介してCas9を安定発現させたシングルセルクローンを樹立した。樹立したクローン細胞株においてCas9が正常に機能することを、B2M遺伝子選択的sgRNAを遺伝子導入した際の細胞表面のB2M発現量変化を指標にFACS解析することで確認した。令和6年度以降にCRISPR/Cas9システムを用いたゲノムワイドスクリーニングを実施するための実験系の構築準備が着実に進展した。
2: おおむね順調に進展している
同意が得られた骨肉腫患者の手術検体の残余をNSGマウスの背部皮下に移植することで、骨肉腫PDXを樹立し、PDXの継代時に腫瘍の一部を単離、破砕することで、PDCを樹立した。令和5年度は、4株の骨肉腫PDXおよびPDCの樹立に成功した。樹立したPDXを対象としたscRNA-seq解析の実施や、骨肉腫PDCなどを対象としたCas9安定発現細胞株の樹立も行い、CRISPRスクリーニングに向けた準備を着実に進めることができた。
購入済みのGeCKO v2 Human Pooled Libraryを上記Cas9発現骨肉腫細胞へ導入し、Puromycinによる薬剤選択の後、Early time pointサンプルと、通常条件下および特殊培養条件下でセレクションを行ったサンプルからDNA抽出とNGS解析を行い、セレクション下で増幅または消失したsgRNAの標的遺伝子を同定することで、骨肉腫PDXにおいて分化度の異なる細胞集団を誘導する責任遺伝子候補を絞り込む。実施済みのRNA-seqおよびATAC-seq解析結果とも照合することで候補遺伝子をバリデーションする。
すべて 2024 2023
すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 1件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (12件) (うち国際学会 1件)
Nature Communications
巻: April ページ: In press
Cancer Immunology, Immunotherapy
巻: 72 ページ: 2971~2989
10.1007/s00262-023-03473-9