研究課題/領域番号 |
23H02855
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
原田 浩 京都大学, 生命科学研究科, 教授 (80362531)
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研究分担者 |
吉村 通央 京都大学, 医学研究科, 准教授 (40597936)
小林 稔 京都大学, 生命科学研究科, 特定助教 (40644894)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | がん / 微小環境 / 低酸素 / 増感 |
研究実績の概要 |
本研究の前に実施した一連の研究で申請者は、「腫瘍内低酸素領域に存在するがん細胞が、放射線治療を優位に生き残り、酸素・栄養環境の良い血管近傍に浸潤して、がんの再発を引き起こす」という再発メカニズムを解明してきた(Goto et al. Nature Commun. 2015; Nakashima et al. Sci Rep. 2017; Harada et al. Nature Commun. 2012; Zhu et al. Oncogene. 2013等)。また、低酸素誘導性転写因子HIF-1を活性化する新規遺伝子ネットワークや、HIF-1依存的に発現誘導され、がんの放射線抵抗性を惹起する低酸素誘導性遺伝子群を同定してきた(Zeng et al. Oncogene. 2015; Yeom et al. Oncotarget. 2017; Kobayashi et al. FEBS J. 2017; Koyasu et al. EMBO Rep. 2023; Chow et al. J Mol Biol. 2023等)。本研究ではその内の1因子(SPINK1)に着目し、その発現制御機構を解明することを目指して研究を展開した。 その成果として、SPINK1の発現が、急性低酸素刺激後(低酸素刺激を受けてから12~24時間程度)の間はHIF-1依存的に誘導される一方で、長期低酸素刺激後(低酸素刺激48~72時間程度)にはHIF-1非依存的な未知の機構によって誘導されることを見出した。また、この時、αケトグルタル酸依存性ジオキシゲナーゼファミリータンパク質の活性低下や、複製ストレス応答が、重要な役割を果たしている可能性を見出した。さらにSPINK1の発現を担う新規低酸素応答性転写因子のスクリーニング実験のために、SPINK1プロモーターの下流に緑色蛍光タンパク質EGFPのコーディング配列をノックインした細胞を独自に樹立して、当該責任因子を同定しつつある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
HIF-1非依存的な放射線抵抗性機構を解明するモデルとしてSPINK1依存的経路を活用し、αケトグルタル酸依存性ジオキシゲナーゼファミリータンパク質の活性低下や、複製ストレス応答の重要性を新たに見出した。また、SPINK1の発現を担う新規低酸素応答性転写因子のスクリーニング実験を通じて、責任因子を同定しつつあることから、研究は順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
がん放射線抵抗性を担う新たな遺伝子ネットワーク構成因子として、αケトグルタル酸依存性ジオキシゲナーゼファミリータンパクの同定、複製ストレス応答内で機能する因子の同定、SPINK1の発現を担う新規低酸素応答性転写因子の同定を進める。
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