研究課題
放射性ヨウ素内用療法は、進行・再発甲状腺分化癌に対する手術後の標準治療である。これによって遠隔転移が消失・完治する著効例から、治療抵抗性を示す症例まで様々である。これまで、高齢者ではしばしば治療抵抗性が見られること、さらに我々はTERT遺伝子のプロモーター領域の変異が、治療抵抗性と関連することを明らかにしてきた。現在、利用可能な甲状腺癌培養細胞は、ヨウ素取り込み能が失われたものばかりで、治療抵抗性の分子機序を解明することは難しかった。そこで本研究の目的は、実際の症例から樹立した、甲状腺特有の機能を維持しているオルガノイドを用い、甲状腺分化癌における放射性ヨウ素内用療法抵抗の分子機序として、TERT分子の役割、また年齢や他の機序の関与を明らかにすることである。2023年度は、数例のオルガノイド検体を長崎大学に輸送し、培養・増殖させる実験系を立ち上げた。マトリゲルから分離してオルガノイドの状態で凍結したものを輸送し、解凍後にマトリゲルに再包埋する手法を行なった。まだ提供施設での生育状態を達成できておらず、原因を探している。また、遺伝子の網羅的解析のため、甲状腺癌に特化したキャプチャー法を用いる遺伝子パネルを設計し、次世代シークエンシングを用いた検証を行なった。RNAは用いず、融合遺伝子についても、イントロンにベイトを設計して、全てDNAで検出する方法とした。少なくとも頻度の高いドライバー変異に関しては、ホルマリン固定パラフィン包埋された検体からでも十分な感度で検出可能であることを確認した。さらに、遺伝子変異と治療反応性の相関を調べる目的で、多数の放射性ヨウ素治療を行なった症例のホルマリン固定試料収集も開始した。
3: やや遅れている
遺伝子パネルや固定試料収集は順調だが、オルガノイドの成育が遅く、輸送後の培養法が最適化されていない可能性がある。
オルガノイドの培養法を改良しつつ、放射性ヨウ素取り込み実験の立ち上げを行う。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 1件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (8件) (うち招待講演 1件)
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