研究課題/領域番号 |
23H02886
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
加藤 直也 千葉大学, 大学院医学研究院, 教授 (90313220)
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研究分担者 |
小笠原 定久 千葉大学, 医学部附属病院, 講師 (20749155)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 肝細胞癌 / 腫瘍免疫微小環境 / 免疫サブクラス / Inflamed type / Non-inflamed type |
研究実績の概要 |
切除不能進行肝細胞癌の標準治療は薬物療法であり、アテゾリズマブ+ベバシズマブ併用療法およびデュルバルマブ+トレミリムマブ併用療法の登場以降、その1次治療は複合免疫療法となった。その治療効果を規定している最大の要因は腫瘍免疫微小環境である。そのため、immune subclassに基づいた肝細胞癌の分類が注目されている。通常、手術時の肝癌検体を用いて腫瘍免疫微小環境の解析が行われている。しかしながら、アーカイブ検体を含んだ解析では複合免疫療法開始直前の腫瘍免疫微小環境を反映していないのではないかと思われる。複合免疫療法に至るまでに、多中心性発癌の影響や肝動脈塞栓術、あるいは分子標的薬治療の影響が考えられるからである。そこで我々は、まず、肝細胞癌の進化と腫瘍免疫微小環境の変遷について知るために、同一患者における二時点間の腫瘍微小環境を比較し、変化の有無やその傾向を分析した。症例は全体で38症例、異なる二時点間の中央値が32.3か月のコホート1が13例、異なる2時点間の中央値が6.7か月のコホート2が25例である。異なる二時点間において、その二時点間隔に関わらず、 immune subclassがinflamed typeへ変化していた症例とnon-inflamed typeへ変化していた症例が存在した。inflamed typeへの変化を認めた症例は、脈管浸潤出現との関連を認めた。Non-inflamed typeへの変化を認めた症例は、AFP上昇、肝外転移出現、macrotrabecular massive出現との関連を認めた。また、cell cycle関連遺伝子の変異を獲得する傾向を認めた。本検討にて、肝細胞癌の腫瘍免疫微小環境は、時間経過とともに変化することが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
肝細胞癌の腫瘍免疫微小環境について多くの症例での2時点間の推移を明らかにすることができた。
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今後の研究の推進方策 |
今までの研究実績を踏まえ、薬物療法直前に生検を行い、その腫瘍免疫微小環境と複合免疫療法の治療効果を検討し、複合免疫療法の治療効果を規定する腫瘍免疫微小環境について明らかにし、腫瘍免疫微小環境を変える方策について検討を行っていく。 今後はまず、複合免疫療法の治療効果を規定する要因と考えられている可溶型PD-L1の安定的測定法確立し、次に膜型PD-L1の安定的検出法を確立する。その上で、肝癌細胞におけるPD-L1切断を担う責任酵素を同定し、その発現につき検討する。次に、FDA承認薬ライブラリー、千葉化合物ライブラリー、東大創薬機構化合物ライブラリー、理研天然化合物ライブラリー、J-PUBLIC化合物ライブラリーを用いてスクリーニングを行い、PD-L1切断酵素阻害薬が肝癌細胞と細胞障害性T細胞との関連に与える影響について解析する。その後、immune competent miceと自家肝癌細胞を用いてPD-L1抗体とPD-L1切断酵素阻害薬との複合免疫療法の概念実証試験を行う。加えて、PD-L1切断酵素阻害薬のMICA切断阻害効果とNK細胞よる肝癌細胞傷害性に及ぼす影響の解析を進める。
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