研究課題/領域番号 |
23H02918
|
配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
矢野 聖二 金沢大学, 医学系, 教授 (30294672)
|
研究分担者 |
南條 成輝 金沢大学, 附属病院, 講師 (00722555)
木場 隼人 金沢大学, 医薬保健学総合研究科, 特任助教 (80967886)
|
研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
|
キーワード | 共存変異 / 分子標的薬耐性 / 肺癌 |
研究実績の概要 |
第 3 世代の上皮成長因子受容体 (EGFR) チロシンキナーゼ阻害薬 (TKI) オシメルチニブは、EGFR 変異非小細胞肺がんの第一選択治療である。しかし、オシメルチニブ耐性に対する確立された治療法は存在しないため、第二世代薬であるアファチニブが依然として標準治療の代替選択肢となっている。今年度は、EGFR変異非小細胞肺がん患者のセルフリーDNA(cfDNA)を分析することにより、アファチニブの有効性と耐性に関連する遺伝子変化を解明することを目的に検討を行った。 【方法】初回治療としてアファチニブで治療を受けた患者 40 人の血漿 cfDNA を分析した。アファチニブ治療に対する耐性獲得前と獲得時に一対の検体を採取し、アファチニブ耐性時のみの検体をそれぞれ22名と18名の患者から採取した。 【結果】22 例の血漿 cfDNA では、13 例 (59.1%) でドライバー EGFR 変異が検出され、EGFR-L858R 変異を伴う2 例でEGFR-V834L 変異が検出された。無増悪生存期間の中央値は、V834L患者では22例すべてよりも著しく短かった(4.2月 vs 9.2月)。さらに、アファチニブ耐性患者 1 名の cfDNA から、EGFR-L858Rに共属する V834L および T790M変異を検出した。Ba/F3 細胞に遺伝子導入した実験結果から、EGFR-L858RにおいてV834L変異がアファチニブやオシメルチニブを含む低濃度のEGFR-TKI に対し耐性を惹起することが明らかになった。 EGFR-L858R+V834L の 3 例では、TP53、CTNNB1、RB1 などの他の共変異がアファチニブ耐性の前後で検出された。 【結論】これらの結果は、V834L が他の共存する変異と協力して、EGFR-TKI の治療効果に影響を与えることを示唆した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画通りに、EGFR-V834LがEGFR-L858Rに共存した場合、EGFR-TKI耐性を惹起することをin vitroおよびin vivoの実験で明らかにすることができた。また、TP53変異による抵抗性の克服薬の同定については、KRAS変異肺がんで大きく進捗しており、現在論文にまとめ投稿中である。 一方で、大規模臨床試験の臨床検体の解析によるTP53変異と治療効果との相関の検討については、臨床検体を入手できたため、令和6年度に解析を行うことにした。
|
今後の研究の推進方策 |
令和6年度は下記の検討を中心に行う。 1、大規模臨床試験の臨床検体の解析によるTP53変異と治療効果との相関の検討(木場、R5年度実施)阪神がん研究会が実施している「EGFR遺伝子変異陽性非小細胞肺がんにおけるアファチニブからオシメルチニブへの逐次投与の有効性を評価する多施設共同前向き観察研究(Gio-Tag Japan:UMIN000037452)」でアファチニブ治療前と耐性時(オシメルチニブ治療前)に採取されたcfDNAを次世代シーケンスにより解析し、アファチニブとオシメルチニブそれぞれの治療でTP53変異の有無によりPFSに有意差があるか、TP53変異の種類(ホットスポット変異を含む)によりPFSが著明に短縮するような変異があるかを検討する。 2、治療抵抗性と相関するTP53変異が抵抗性を惹起する機構の解明 EGFR変異株やKRAS変異株を用い、TP53野生型株には変異TP53遺伝子の導入や発現低下処理を行い、変異型株には野生型TP53遺伝子を強制発現させ、EGFR阻害薬やKRAS阻害薬感受性の変化を検討し、TP53変異が分子標的薬抵抗性を惹起するメカニズムや、それを抑制する治療法を検討する。
|