研究課題
本研究は、小児の難治性頻回再発型/ステロイド依存性ネフローゼ症候群(FRNS/SDNS)及び発症早期のFRNS/SDNSを対象として、リツキシマブの投与前後で定期的に、また再発等のイベントの際に、①抗ネフリン抗体とそのサブクラス(IgG4およびIgG1)の高感度測定、②最新型ハイパラメーターフローサイトメトリーを用いたB細胞分画を含む造血系多次元解析等を実施し、それらのデータと臨床経過の関連を解析することで、リツキシマブによる長期寛解誘導のメカニズムを解明することを目的とする研究である。令和5年度は、シスメックス株式会社の協力のもと、ハーバード大学で用いられているELISA系より、非特異的シグナルが少なく、より感度の高いELISA系を開発し、同様の検体の抗ネフリン抗体を測定したところ、70%を超える症例で陽性であることを明らかにした。さらに、自動化が可能なHISCL法(High-sensitivity Chemiluminescence Enzyme-immunoassay)による抗ネフリン抗体の測定系の確立を目指したが、やはり非特異的シグナルの問題が大きく、現在、その問題を解決すべくiCT(immune complex transfer:免疫複合体転移)法による抗ネフリン抗体自動測定系を構築中である。フローサイトメトリー解析については、B細胞サブセットの解析系を確立しており、これまでに、小児の初発特発性ネフローゼ症候群患者ではコントロール群に比して、CD19+CD27+IgD-のSwitched memory B細胞数が有意に高値であることを明らかにしている。なお、令和5年度中に研究分担者の堀之内を代表とする全国多施設による研究コンソーシアムを立ち上げており、令和6年度より検体及び臨床情報の収集を開始予定である。
2: おおむね順調に進展している
ハーバード大学で用いられているELISA系より、非特異的シグナルが少なく、より感度の高いELISA系及びB細胞サブセットの解析系を確立し、全国多施設による研究コンソーシアムを立ち上げることができた。
全国多施設による研究コンソーシアムを利用して、検体及び臨床情報の収集を推し進めるとともに、速やかにiCT法による抗ネフリン抗体自動測定系を確立し、抗ネフリン抗体の測定やB細胞サブセットの解析を進めていく。なお、令和6年秋より、研究分担者の野津寛大を研究代表者として、小児ネフローゼ症候群の早期再発例を対象としたリツキシマブの有効性・安全性を検証する医師主導治験が開始される予定であり、その治験に登録される患者についても、本研究への登録を進めていく予定である。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 2件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 3件)
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