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2023 年度 実績報告書

汗孔角化症の病態解明を通じた細胞競合/クローン拡大機構の理解と新規治療法開発

研究課題

研究課題/領域番号 23H02931
配分区分補助金
研究機関神戸大学

研究代表者

久保 亮治  神戸大学, 医学研究科, 教授 (70335256)

研究分担者 福本 毅  神戸大学, 医学研究科, 准教授 (80778770)
研究期間 (年度) 2023-04-01 – 2026-03-31
キーワード汗孔角化症 / エピゲノム変異 / 細胞競合
研究実績の概要

我々は汗孔角化症の発症メカニズムの解析を通じて、汗孔角化症の新しい原因遺伝子FDFT1を発見するとともに、エピゲノム変異という、遺伝子のDNA配列の変化ではなく、遺伝子の働きのスイッチがオフになる変化が皮膚病の原因となることを初めて発見した。本発見は、エピゲノム変異の探索を通じて、まだ原因が分かっていないさまざまな疾患の原因究明に役立つことが期待される。
FDFT1におけるエピゲノム変異は、発生初期に生じていることが、エピゲノム変異のみを持つ細胞と、セカンドヒットを生じてクローン性に増殖した細胞とが持つ体細胞変異を網羅的に解析することにより示された。エピゲノム変異を持つ皮膚が、目に見える症状なく存在しており、そこにセカンドヒット変異が生じることで単発のミベリ型汗孔角化症や、抗がん剤投与後に身体の一部分にだけ汗孔角化症が多発する新しい臨床型の汗孔角化症が発症することを明らかにした。
我々が発見したFDFT1のエピゲノム変異による汗孔角化症は、他の汗孔角化症とは異なり子どもに遺伝しないため、今後、遺伝学的診断にもとづいて、汗孔角化症が子どもに遺伝する心配があるかどうかを診断できるようになることが期待され、その診断は、多くの患者さんの安心につながることが期待される。さらにこのタイプの汗孔角化症にスタチンの外用が効果的であることが明らかとなり、遺伝学的診断に基づいた汗孔角化症の新しい治療法開発への道が拓かれた。今後は、各皮疹を形成している変異細胞コロニーの拡大メカニズム、コロニー辺縁で生じる細胞競合メカニズム、メバロン酸経路酵素を欠くためにコレステロールを合成できない変異細胞の性質を利用した新規治療法の探索について、更なる研究を進めて行く方針である。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

汗孔角化症の新規原因遺伝子を同定するとともに、原因遺伝子のゲノム変異ではなく、エピゲノム変異によって生じる汗孔角化症があり、臨床的に特徴的な皮疹を生じることを明らかにした。すなわち、汗孔角化症の中に、顕性遺伝性のものと、非遺伝性のものがあることを初めて明らかにできた。本発見は、臨床における正しい診断に役立つだけでなく、遺伝学的検査を通じた診断により、子どもへの遺伝を心配する必要があるかどうかを知ることができるようになるという点で、遺伝カウンセリングにも非常に有用である。以上のように、研究は順調に進展している。

今後の研究の推進方策

汗孔角化症の新規原因遺伝子を報告することができた。今後は、(1)汗孔角化症の皮疹を形成している変異細胞のクローン性拡大のメカニズム、(2)コロニー辺縁において変異細胞を取り囲む野生型細胞に特異的に細胞死が誘導される細胞競合現象の分子メカニズム、(3)皮疹を形成する細胞がメバロン酸経路酵素を欠くためにコレステロールを自ら合成できないという性質を利用した新規治療法の探索、以上について研究を進めて行く。さらに、汗孔角化症患者を集積して解析することにより、日本人における汗孔角化症患者の臨床型と遺伝学的要因のランドスケープを明らかにし、遺伝子型・表現型の相関性を明らかにする。

  • 研究成果

    (11件)

すべて 2024 2023 その他

すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (6件) (うち招待講演 6件) 備考 (2件)

  • [雑誌論文] Gene-specific somatic epigenetic mosaicism of FDFT1 underlies a non-hereditary localized form of porokeratosis2024

    • 著者名/発表者名
      Saito S, Saito Y, Sato S, Aoki S, Fujita H, Ito Y, Ono N, Funakoshi T, Kawai T, Suzuki H, Sasaki T, Tanaka T, Inoie M, Hata K, Kataoka K, Kosaki K, Amagai M, Nakabayashi K, Kubo A
    • 雑誌名

      American Journal of Human Genetics

      巻: 111 ページ: 896-912

    • DOI

      10.1016/j.ajhg.2024.03.017

    • 査読あり
  • [雑誌論文] 角化症の遺伝学的モザイク2024

    • 著者名/発表者名
      久保亮治
    • 雑誌名

      皮膚科

      巻: 4 ページ: 138-145

  • [雑誌論文] こどもによくみられる遺伝性皮膚疾患2023

    • 著者名/発表者名
      小野紀子,久保亮治
    • 雑誌名

      MB Derma

      巻: 334 ページ: 93-103

  • [学会発表] 皮膚モザイク疾患から迫る多細胞生命自律性2023

    • 著者名/発表者名
      久保亮治
    • 学会等名
      日本分子生物学会
    • 招待講演
  • [学会発表] スキンタッグはなぜできる? 身近な症状に潜む遺伝学的モザイク2023

    • 著者名/発表者名
      久保亮治
    • 学会等名
      日本皮膚科学会東京支部学術大会
    • 招待講演
  • [学会発表] Genetic Mosaicism in the Pathogenesis of Common and Rare Skin Diseases2023

    • 著者名/発表者名
      Akiharu Kubo
    • 学会等名
      Annual Autumn Meeting of the Korean Dermatology Association
    • 招待講演
  • [学会発表] 遺伝学的モザイクから考えるクローン性増殖疾患の皮膚科学2023

    • 著者名/発表者名
      久保亮治
    • 学会等名
      日本皮膚悪性腫瘍学会学術大会
    • 招待講演
  • [学会発表] 遺伝子から眺める皮膚科学 ~身近な疾患から稀少疾患まで~2023

    • 著者名/発表者名
      久保亮治
    • 学会等名
      日本小児皮膚科学会学術大会
    • 招待講演
  • [学会発表] 皮膚疾患・症状に見られるモザイクの考え方2023

    • 著者名/発表者名
      久保亮治
    • 学会等名
      日本臨床皮膚科医会総会・臨床学術大会
    • 招待講演
  • [備考] 皮膚病の要因となるエピゲノム異常を初めて発見 -汗孔角化症の新しい発症メカニズムと原因遺伝子を解明-

    • URL

      https://www.kobe-u.ac.jp/ja/news/article/20240423-65228/

  • [備考] Mosaics of predisposition cause skin disease

    • URL

      https://www.kobe-u.ac.jp/en/news/article/20240423-65228/

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公開日: 2024-12-25  

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