研究実績の概要 |
過去60年間で日本を含む先進諸国においてアレルギー疾患患者数が増加し、医療費増大の一因として大きな社会問題になっている。気管支喘息やアトピー性皮膚炎等増加は、この10年で世界的に緩やかになりつつあるものの、入れ替わる様に、2000年以降、消化管アレルギー、好酸球性副鼻腔炎等の新たなアレルギー疾患が世界的に増加している。これらの事実は、この10-20年間における何かしらの環境要因の変化が、新興アレルギー疾患の増加に寄与している可能性を示唆しているが、詳細は明らかになっていない。本研究では上皮細胞の一種であるタフト細胞に着目し、アレルギー性炎症におけるタフト細胞の役割を明らかにすることを目的とする。今年度は、樹立したタフト細胞依存性の消化管炎症モデルを用いて、炎症に関与する免疫細胞やサイトカイン等の炎症関連分子の評価を行った。その結果、小腸組織の中でも特に回腸に高度な好酸球数の増加を認めることが明らかとなった。一方で、好中球、好塩基球、T細胞、ILC2の数はコントロールマウスと有意な差を認めなかった。また、関与するサイトカイン等の炎症関連分子を明らかにするため、消化管における各種サイトカインや細胞マーカーの発現を検討したところ、IL25, Il5等の2型サイトカインと、Trpm5, pou2f3等のタフト細胞関連マーカー等が有意に発現増強していることが明らかとなった。また、消化管組織を用いてトランスクリプトーム解析を行ったところ、コントロールマウスとの消化管組織と比較して2670遺伝子が有意に発現変動することを明らかにすると共に、それらを用いたパスウェイ解析ではTh2, Il-13 signaling pathwayが有意に増強していることが明らかとなった。
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