研究課題/領域番号 |
23H02976
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 東京薬科大学 |
研究代表者 |
山口 智之 東京薬科大学, 生命科学部, 教授 (80392158)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 臓器再生 / 胎仔移植 / 肝幹細胞 |
研究実績の概要 |
臓器移植におけるドナー不足は深刻であり、この問題を解決する為には臓器を作出する手法の開発が喫緊の課題である。その臓器を作出する為のソースとして期待されているのが、人工多能性幹細胞(iPS細胞)である。我々はこれまでに、臓器欠損動物の胚盤胞にiPS細胞を注入することで、産まれたキメラ動物に完全にiPS細胞由来の臓器を創出する方法である「胚盤胞補完法」を確立した。この手法でiPS細胞を使ってマウス体内にラットの膵臓を創出することに成功している。しかし、マウス体内にヒトiPS細胞から臓器を創出することはできていない。これはヒトとマウスで発生様式が大きく異なる事に起因していると考えられる。そこで、本研究ではヒトとマウスで発生様式の互換性が高い発生後期のマウス胎仔にiPS細胞由来の組織原基を移植し、マウスの発生環境を利用して臓器を創出することを目的とした。当該年度は蛍光ビーズおよびGFPトランスジェニックマウス由来骨髄細胞を様々な胎齢および経路で移植し、移植手技の確立を行った。 マウス肝臓の原基が出現するのは胎生9.5~10.5日齢である。従って、この時期に蛍光ビーズ又はGFPトランスジェニックマウスの骨髄細胞を移植し、胎仔肝臓への分布が可能かどうかを観察した。卵黄静脈経由の移植では、技術的に移植可能な胎齢が14.5日であり、肝芽形成時期である胎齢10.5日には移植することができなかった。また、胎仔の生存率も著しく低くなることが分かった。一方で胎盤経由の移植では生存率が高く、胎齢10.5日の胎仔に移植することで肝臓への移植効率が高かった。従って今後はこの手法で肝幹細胞の移植を試みる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当該年度の目標は、肝臓発生時期(胎齢10.5日)の胎仔への細胞移植経路を確立することであり、胎齢10.5日の胎仔へ胎盤経由で細胞を移植すれば肝臓へ細胞を分布させることが分かり、本研究で行う細胞移植の手法が確立できたため順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
今後は以下の研究に取り組む。①肝前駆細胞の移植:2023年度までに確立した移植法によりGFPトランスジェニックマウス由来肝前駆細胞を移植し、肝細胞の生着の有無を確認する。生着率が低い場合には、移植細胞数を増やす、又は肝毒性のある薬剤であるレトロルシンを投与して肝障害を起こした胎仔に移植することで生着率向上を目指す。 ②肝臓欠損マウス胎児への移植:レシピエントマウスに肝臓欠損マウスであるHhex欠損マウス、Sek1欠損マウス、それぞれの胎児に上記で確立した方法でGFPトランスジェニックマウス由来の肝前駆細胞を移植し、肝臓形成を試みる。 以上の計画で胚盤胞補完法に変わる、胎仔補完法(Conceptus complementation)によるヒト肝臓創出手法の確立を目指す。
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