研究課題/領域番号 |
23H02982
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
仲田 興平 九州大学, 大学病院, 准教授 (30419569)
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研究分担者 |
山下 智大 九州大学, 薬学研究院, 講師 (30645635)
肥川 和寛 九州大学, 医学研究院, 共同研究員 (50941308)
森崎 隆 九州大学, 医学研究院, 共同研究員 (90291517)
池永 直樹 九州大学, 大学病院, 講師 (90759755)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | Autophagy / 膵癌 / 樹状細胞 / 免疫抑制性微小環境 / 抗腫瘍免疫 / 抗原性 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、膵癌細胞のAutophagyと腫瘍抗原性に着目し、樹状細胞(Dendritic cell; DC)の活性化を介した抗腫瘍免疫の増強を目指した新規治療法の開発を目指すことである。 令和5年度は、まず膵癌細胞のAutophagyと抗原提示細胞であるDCの活性化の関係について評価した。当初の仮説通り、膵癌細胞のAutophagyを抑制することで、in vitroの共培養実験、in vivoのマウス膵癌モデルのいずれにおいても、DCが活性化することを明らかにした。さらに、詳細な免疫微小環境の解析を行うため、Autophagy抑制膵癌細胞(KPC-shATG7)を移植したマウス同所移植モデルを用いてscRNA-seq解析を行った。その結果、コントロール群(KPC-shNC)と比較して、Autophagy抑制腫瘍ではDCのAntigen presenting genes、Maturation genesなどの活性化に関わる遺伝子群の発現が上昇していた。 さらに、Autophagy抑制によるがん抗原の評価を行うため、人工的ながん抗原としてEGFPを発現させたマウス膵癌細胞(KPC-EGFP)を用いた解析を行った。Autophagy阻害剤(3-MA, Chloroquine)を添加したKPC-EGFPでは、コントロールと比較してEGFPの発現が有意に上昇しており、がん抗原としてのEGFPが腫瘍内に蓄積されていることが示唆された。これらに加え、独自の薬剤スクリーニングによって同定したAutophagy阻害剤(薬剤A)とaPD1抗体を膵癌同所移植マウスモデルに投与したところ、2剤併用療法は著明に腫瘍を縮小させることが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の仮説に沿って、膵癌細胞のAutophagyを抑制することでDCの活性化が促進されることを明らかにした。さらに、人工的ながん抗原としてEGFPを用いた検証では、Autophagy阻害剤により膵癌細胞内のEGFPが蓄積しており、癌細胞の抗原性が上昇していることが示唆された。さらに、独自のスクリーニングで同定した薬剤Aは、膵癌細胞のautophagyを抑制し、aPD1抗体と併用することで著明な腫瘍縮小効果が得られた。これらの結果が得られたことから、おおむね研究計画は順調に進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
膵癌細胞のAutophagyを抑制することで、抗原提示細胞であるDCの活性化が誘導されることは明らかになったが、今後は、DCの活性化をさらに促進させるべく、そのメカニズムを解明することを目指す。 具体的には、現在、ネオアンチゲン由来ペプチドを刺激したDCワクチン療法のマウスモデルを作製しており、このマウスモデルを用いてDCの活性化をさらに促進させるメカニズムを探りたいと考えている。現時点での方法としては、CRISPR-Cas9 KO whole-genome-libraryを用いた網羅的なGenome-wideスクリーニング法を用いて、DCの活性化メカニズムを解明し、より強力にDCの抗原提示能を増強させることを目指す。最終的には、これらのDC標的治療とAutophagy阻害剤の併用効果の可能性について追究したいと考えている。
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