今後の研究の推進方策 |
1. 超早期肝転移巣のダイナミックな分子生物学的解析 技術開発により、初期マイクロ肝転移巣の純化が可能になった。転移初期フェーズにおけるダイナミクスを高い時間分解能で解析するため、数ポイントの時系列でサンプルを取得する。具体的には、GFPによって蛍光ラベルした腫瘍オルガノイド(500,000細胞相当)をNOGマウスの脾臓に移植し、移植後1, 4, 7日後に灌流およびセルソーターを用いて転移巣を単離する。得られた転移細胞は細胞数に応じてバルクRNAシーケンス、シングルセルRNAシーケンス、ATACシーケンス等に用いる。我々は以前、CRISPRスクリーニングを用いて、大腸腫瘍オルガノイドの転移表現系に寄与する遺伝子を同定した。転移能を有さない野生型オルガノイドおよび高い転移能を有するノックアウトオルガノイドを用い、その差分を解析することで、転移に関係するシグナル、プログラムや転写因子ネットワークを抽出する。
2. 超早期大腸腫瘍転移を対象とした統合解析および治療開発 項目1で取得した早期転移細胞のオミクスデータを統合的に解析し、転移初期フェーズにおける分子生物学的変化を把握する。特にシングルセル解析を時系列で実施し、単一細胞レベルでのトランスクリプトーム変化や、特定の細胞サブタイプあるいは状態の出現、消失を補足し、これらの変化を駆動するシグナルや摂動を類推する。転移時に活性化あるいは不活化し、機能的意義を有すると推察される候補シグナルについては、上記の野生型およびノックアウトオルガノイドを用いて、コロニー形成や増殖など、in vitroでのオルガノイド表現系へのインパクトを検証する。このようなシグナルや分子は転移の抑制あるいは予防の標的となることが考えられ、遺伝学的摂動や阻害剤投与が転移フェノタイプに与える影響を検討する。
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