研究課題/領域番号 |
23H03049
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 聖マリアンナ医科大学 |
研究代表者 |
鈴木 直 聖マリアンナ医科大学, 医学部, 教授 (90246356)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | がん・生殖医療 / 妊孕性温存 / 小児・AYA世代がん |
研究実績の概要 |
がん治療によって、小児・AYA世代がん患者において、配偶子の数が低下又は喪失することで、妊孕能の低下若しくは喪失が惹起される可能性がある。2004年に、卵巣組織凍結・移植による世界初の生児獲得の報告がブレークスルーとなり、がん・生殖医療という新しい領域が2007年に確立された。その後も、我々の研究グループを含めて、世界中においてがん・生殖医療に関する基礎的な研究成果が集積されつつあるものの、がん・生殖医療の技術革新は依然課題が山積している。本研究では、新しい技術や未だ臨床応用されていない技術の革新を目的として、がん・生殖医療に関わる新しい臨床技術開発を目的とした5つの研究を行った。 1)チロシンキナーゼ阻害剤(TKI)の卵巣毒性の検証に関する研究:第一世代TKI(イマチニブ)、第二世代TKI(ダサチニブ)を用いて、卵巣毒性に関する実験系(in vitro培養系とin vivoの卵胞数カウント等)を確立した。2)白血病患者における卵巣内のMRD(微小残存腫瘍)に関する検証と卵巣移植応用の実現可能性を検証する研究: C57BL/6マウス(8週齢♀)に白血病細胞株(EL4細胞)を腹腔内あるいは尾静脈への移植により作成したMRDモデルマウスの系にを確立した。3)新たな妊孕性温存療法としての人工卵巣の開発に向けた基礎的研究:本年度は、人工卵巣デバイスの組成としてコラーゲンを用いて卵胞の発育観察を行った。4)最適な卵巣移植法の開発に向けた基礎的研究:カニクイザルの大網を用いた実験の成果(ホルモン値回復)を確認した。5)新しい精巣組織凍結法の開発:齧歯類を用いた精巣組織ガラス化凍結法の組織学的検討の前段階として、生の精巣組織(未凍結)を用いた移植実験(VEGFを含むゲルを利用して)を実行した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1)チロシンキナーゼ阻害剤(TKI)の卵巣毒性の検証に関する研究:第一世代TKI(イマチニブ)、第二世代TKI(ダサチニブ)を用いて、卵巣毒性に関する実験系(in vitro培養系とin vivoの卵胞数カウント等)を確立しており、preliminary実験結果を得ていることから順調に進展していると判断できる。 2)白血病患者における卵巣内のMRD(微小残存腫瘍)に関する検証と卵巣移植応用の実現可能性を検証する研究: C57BL/6マウス(8週齢♀)に白血病細胞株(EL4細胞)を腹腔内あるいは尾静脈への移植により作成したMRDモデルマウスの系にを確立しており、preliminary実験結果を得ていることからおおむね順調に進展していると判断できる。 3)新たな妊孕性温存療法としての人工卵巣の開発に向けた基礎的研究:人工卵巣デバイスの組成としてコラーゲンを用いた人工卵巣を試行錯誤して作成し、卵胞の発育を確認することができたが、良好な胚を得ることができず苦労している。本年度は、工夫を凝らしチャレンジする予定である。以上より、おおむね順調に進展していると判断できる。 4)最適な卵巣移植法の開発に向けた基礎的研究:カニクイザルの大網を用いた実験の成果(ホルモン値回復)を確認できたことから順調に進展していると判断できる。 5)新しい精巣組織凍結法の開発:齧歯類を用いた精巣組織ガラス化凍結法の組織学的検討の前段階として、生の精巣組織(未凍結)を用いた移植実験(VEGFを含むゲルを利用して)を実行した。研究成果としては満足のいく結果ではなかったが改善点を確認できたことから、カニクイザルの精巣を用いた実験へと進む予定へと進んでいる。以上より、おおむね順調に進展していると判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
新しい技術や未だ臨床応用されていない技術の革新を目的として、がん・生殖医療に関わる新しい臨床技術開発を目的とした5つの研究を継続している【1) チロシンキナーゼ阻害剤(TKI)の卵巣毒性の検証に関する研究、2)白血病患者における卵巣内のMRD(微小残存腫瘍)に関する検証と卵巣移植応用の実現可能性を検証する研究、3)新たな妊孕性温存療法としての人工卵巣の開発に向けた基礎的研究、4)最適な卵巣移植法の開発に向けた基礎的研究、5)新しい精巣組織凍結法の開発】 現在、研究の進捗状況としては概ね順調に進んでいることから、今後の推進方策として当初の予定を変更するほどの方策はないと判断している。又、研究の計画あるいは研究を遂行する上での問題点は無いと判断している。
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