研究課題/領域番号 |
23H03073
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
山口 雅也 大阪大学, 大学院歯学研究科, 准教授 (00714536)
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研究分担者 |
川端 重忠 大阪大学, 大学院歯学研究科, 教授 (50273694)
住友 倫子 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(歯学域), 教授 (50423421)
細川 正人 早稲田大学, 理工学術院, 准教授(任期付) (60722981)
山下 隼人 大阪大学, 大学院基礎工学研究科, 助教 (10595440)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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キーワード | 肺炎球菌 / 細胞壁分解酵素 / 高速原子間力顕微鏡 / シングルセル解析 |
研究実績の概要 |
肺炎球菌はmitis群の口腔レンサ球菌で、肺炎や敗血症、髄膜炎の主な原因菌の一つである。遺伝子取り込み能が高く薬剤耐性を得やすいことから、新たな感染制御法の確立が求められている。本研究では、肺炎球菌の細胞壁分解能が病態形成と薬剤耐性獲得に果たす役割の解明を行う。 まず、肺炎球菌のゲノム配列から、細胞壁分解酵素LytA, LytC, CbpDをコードする遺伝子の分布と分子系統関係を解析するとともに、分子進化解析により、種内における選択圧を算出することでコドンごとの進化的な保存性を評価した。その結果、lytA遺伝子がもっともアミノ酸変異が許容されないコドンの割合が高いことが示された。次に肺炎球菌の細胞壁分解酵素であるLytAの組換えタンパク質と細菌菌体を混和し、細胞壁の融解を引き起こすかを吸光度測定で評価した。その結果、肺炎球菌と同じmitis群のStreptococcus mitis, Streptococcus oralisは分解されるが、mutans群であるStreptococcus mutansは分解されないことが示された。さらに、高速原子間力顕微鏡を用いて、S. mitisに細胞壁分解酵素を添加し、細胞壁への結合と分解様式を観察した。その結果、LytA投与直後から菌体表層に生成物が増加し、10分程度でZリングの消失が認められた。さらに、投与後18分程度までで孔の形成と菌体の崩壊が観察された。 また、肺炎球菌の野生株を若齢マウスと老齢マウスに感染させ、肺を摘出した後にシングルセルRNA-seq解析を実施した。シングルセル解析の結果、老齢マウスにおいて感染によって遊走される多形核白血球の細胞群の構造が単純化されていることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の計画に沿って解析を実施し、各実験において解析結果を得た。さらにマウス感染モデルにてシングルセルRNA-seq解析を行い、肺感染時の宿主応答の詳細の解明を行った。当初の計画以上の結果が得られたことから、「当初の計画以上に進展している」と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
本研究は4カ年で実施するものである。原則的に当初の研究計画に沿って実行する。 マウス経鼻感染後の肺胞洗浄液を分離し、細菌シングルセル解析によって菌体ごとのゲノム配列の解読を行う。感染後に生じた肺炎球菌集団内に存在する点変異と新規挿入遺伝子を決定し、生体内での自然変異と肺微生物叢からの水平遺伝子伝播を決定する。同様に各細胞壁分解酵素の欠失株を感染させ、水平伝播の割合を評価する。また、感染前後の微生物叢構造を解析することで競合に果たす役割を評価する。 また、生体内における競合と水平伝播の解明を行うため、経鼻感染後の肺胞洗浄液を分離し、細菌シングルセル解析によって菌体ごとのゲノム配列の解読を行う。感染後に生じた肺炎球菌集団内に存在する点変異と新規挿入遺伝子を決定し、生体内での自然変異と肺微生物叢からの水平遺伝子伝播を決定する。同様に各細胞壁分解酵素の欠失株を感染させ、水平伝播の割合を評価する。また、感染前後の微生物叢構造を解析することで競合に果たす役割を評価する。 さらに細胞壁分解酵素群が耐性化の獲得に果たす役割の解明するため、肺胞上皮細胞株に、薬剤耐性遺伝子を持った口腔レンサ球菌を感染させる。その後、該当薬剤感受性の肺炎球菌の野生株と各細胞壁分解酵素の欠失株を感染させ、抗菌薬を加える。抗菌薬作用後の生存菌数を比較し、細胞壁分解酵素群が類縁菌からの耐性遺伝子の獲得に与える影響を評価する。
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