研究課題/領域番号 |
23H03080
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
今里 聡 大阪大学, 大学院歯学研究科, 教授 (80243244)
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研究分担者 |
佐々木 淳一 大阪大学, 大学院歯学研究科, 講師 (50530490)
高橋 雄介 大阪大学, 歯学部附属病院, 講師 (60397693)
松本 卓也 岡山大学, 医歯薬学域, 教授 (40324793)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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キーワード | 歯髄再生医療 / エクソソーム / 組織工学 / 歯髄幹細胞 / 細胞集合体 |
研究実績の概要 |
本研究は、歯髄幹細胞由来のエクソソームを抽出し、組織工学用材料として活用することを目的としている。令和5年度では、歯髄幹細胞の分離・培養とエクソソームの抽出法の確立を目指した。まず、患者の同意のもと得たヒト第三大臼歯から歯髄組織を取り出し、ディスパーゼおよびトリプシンを用いて初代培養細胞を分離した。初代培養細胞の増殖能を評価した結果、20%ウシ胎仔血清を加えたαMEM培地を用いると培養7日間で約15倍に増殖することが分かった。次に、初代培養細胞の象牙芽細胞、脂肪細胞、血管内皮細胞への分化能を検討した。象牙芽細胞分化については、初代培養細胞をアスコルビン酸やβグリセロリン酸などを加えた培地で培養し、von Kossa染色を行ったところ象牙質様の石灰化基質の沈着が観察された。また、IBMXやインスリンを加えた培地で培養すると、オイルレッドOに陽性の脂肪細胞に分化することが分かった。さらに、初代培養細胞をマトリゲル上で50 ng/mLの血管内皮細胞増殖因子を加えたEGM-2 MVを用いて培養すると、毛細血管様の網目状構造を形成した。これらの結果から、ヒト第三大臼歯から分離した初代培養細胞は多分化能を有した歯髄幹細胞であることが示された。そこで次に、この歯髄幹細胞の培養上清からエクソソームを抽出することを試みた。具体的には、歯髄幹細胞をエクソソーム非含有培地で48時間培養することで作製した培養上清からMagCaptureエクソソームアイソレーションキットを用いてアフィニティー法によってエクソソームを抽出した。また、得られたエクソソームは代表的マーカーであるCD81に陽性であることをELISA法によって確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和5年度の研究実施計画に則り、歯髄幹細胞由来エクソソームの抽出法の確立を目指した。前述のように、ヒト由来の歯髄幹細胞を樹立し、さらに歯髄幹細胞由来のエクソソームを精製することに成功した。 以上のことから本研究の進捗は、おおむね順調に進展していると判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
歯髄幹細胞から得られたエクソソームが歯髄幹細胞の表現型に与える影響を評価し、歯髄幹細胞由来エクソソームの歯髄再生への応用の可能性を検討する。具体的には、以下の実験を実施する。 1.歯髄幹細胞由来エクソソームの抽出と評価:ヒト歯髄幹細胞をエクソソーム非含有無血清培地で最長10日間培養し、培養上清からアフィニティー法によって全エクソソームを抽出する。得られたエクソソームの透過型電子顕微鏡観察および動的散乱光解析を通じて、粒子の形状、構造および粒径分布を調べ、エクソソーム抽出に適した初期細胞播種数と培養日数を決定する。 2.エクソソームが歯髄幹細胞に与える影響の検討:抽出したエクソソームを無血清培地あるいは血清含有培地に添加して歯髄幹細胞を培養し、細胞の生存(Live/Dead染色)、増殖(MTT assay)や分化(Real-time PCR法、ウェスタンブロット法)を評価することで、エクソソームが歯髄幹細胞の表現型に与える影響を明らかにする。 3.細胞集合体/エクソソーム複合体の歯髄再生能の評価:歯髄幹細胞から成る細胞集合体へのエクソソームの導入法を確立する。そのうえで、細胞集合体/エクソソーム複合体を歯髄再生in vivoモデルに移植することで、その歯髄再生能を検証する。
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