研究課題/領域番号 |
23H03093
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
澤瀬 隆 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(歯学系), 教授 (80253681)
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研究分担者 |
佐々木 宗輝 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(歯学系), 助教 (10706336)
右藤 友督 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(歯学系), 助教 (10816680)
黒嶋 伸一郎 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(歯学系), 准教授 (40443915)
住田 吉慶 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(歯学系), 教授 (50456654)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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キーワード | インプラント周囲炎 / マクロファージ / LPS |
研究実績の概要 |
インプラント周囲炎は高頻度で起こる生物学的合併症のひとつであり,病態形成機構が不明で,決定的な治療法がない難治性慢性硬軟組織疾患である.本研究課題は,インプラント特有の異物反応が関わるマクロファージの階層構造と三次元構造がもたらす組織配向性変化に着目し,インプラント周囲炎モデルを用い,網羅的骨質解析に加えて空間的1細胞解析とゲノム編集を応用し,病変部硬軟組織のマクロファージと組織配向性追跡による分子・遺伝子機構探索からインプラント周囲炎の病態形成機構の解明と,新規治療戦略の基盤を構築することを目的とした. 本年度は,マウス用インプラントが開発が終了しなかったため,フロイトのアジュバンド活性を応用したLPS腹腔内投与による免疫化とLPS粘膜内投与を併用してLPS誘発型インプラント周囲炎モデルラットを作成し,非荷重環境下におけるインプラント周囲硬軟組織について,詳細な解析・検索・検討を行った.その結果,インプラント周囲軟組織では炎症が進行しており,コラーゲン産生抑制,血管数低下,炎症性細胞浸潤がみとめられ,さらにタンパク質Xが異常に産生されていることが分かった.また,マクロファージについても,マクロファージサブタイプであるM1とM2の比率が有意に変化して,極性が炎症側へとシフトすることが分かった.さらにインプラント周囲炎様病変部硬組織のコラーゲン組織配向性においては,LPS投与により,第1スレッドと第2スレッド内部における有意なコラーゲン配向性変化が認められ,組織配向性は大きく乱れることが明らかとなった.一方,スレッド外部では,LPS投与の有無にかかわらず,そのような変化は認められなかった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
マウス用インプラントは現在開発中であるが,インプラント周囲炎モデルラットを用いた組織配向性を含む詳細な検索結果から,組織配向性がどのような状態になり,マクロファージの極性がどのように変化するかを明らかにできたことから,(2)おおむね順調に進展している,と判断した.
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今後の研究の推進方策 |
初めに,前年度から行っているマウス用インプラントの開発を行い,開発がなされたら,LPS誘発型インプラント周囲炎モデルマウスを作製する.その後,荷重環境下と非荷重環境下において,インプラント周囲炎様病変における硬軟組織評価を,昨年度と同様の方法で網羅的(組織学的解析,免疫組織化学的解析,免疫病理学的解析,遺伝子学的解析,タンパク質解析,生化学的解析)に解析して,動物種が異なっても同じ細胞動態変化が起こっていることを確認後,組織を用いた空間的1細胞遺伝子解析に挑戦することで,マクロファージの階層構造やマクロファージ/骨髄幹細胞連関を分析し,病態形成機構の鍵となる候補のマクロファージサブタイプまたは候補となるマクロファージ以外の細胞,ならびに候補分子を探索する.次いで,クロドロネートリポソームを用いて,インプラント周囲炎モデルマウスから時間依存的にマクロファージを全て除去することで,骨髄幹細胞とマクロファージの直接的もしくは間接的リンクが存在するかを探索する.そして最後に,分担者の黒嶋が作製中のマクロファージ遺伝子改変マウスを応用して特定のマクロファージを消失させ,インプラント周囲炎モデルにおいて組織配向性が変化してインプラント周囲炎の硬軟組織病変が有意に悪化または寛解することを証明するとともに,鍵となるマクロファージや分子・遺伝子の同定に挑む.
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