研究課題/領域番号 |
23H03109
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
齋藤 幹 東北大学, 大学病院, 講師 (40380852)
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研究分担者 |
福本 敏 九州大学, 歯学研究院, 教授 (30264253)
岩本 勉 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 教授 (90346916)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 歯胚 / 歯原性上皮細胞 / エナメル芽細胞 / エナメル質 / カルシウム結合タンパク |
研究実績の概要 |
以前の研究で、エナメル芽細胞では腫瘍マーカーの発現が増加していることが示唆された。そこで、エナメル質石灰化における腫瘍マーカーの役割について検討することにした。まず、歯胚から採取したRNAを基に、CAGEシークエンスやsingle cell RNAシークエンスを行う事により、歯胚で発現が上昇している腫瘍マーカーのスクリーニングを行った。その結果、複数の腫瘍マーカー分子の発現上昇が見られた。そこでこれら分子のうち、間葉系細胞ではなく、上皮系のエナメル芽細胞で特異的に発現している分子を検討したところ、カルシウム結合モチーフであるEF-handを持つ、カルシウム結合タンパクS100a6の発現上昇が認められた。S100a6の機能解析を行うために、ラット歯原性上皮細胞株であるSF2細胞のS100a6の発現をsiRNAにて抑制し、マイクロアレイを行い、このデータを基にパスゥエイ解析およびGene Ontology (GO)解析を行った。パスウェイ解析では、細胞周期に影響している可能性が示唆され、GO解析では同様に、核関連分子、染色体関連分子、細胞周期を制御する分子の発現が減少していた。その一方、S100a6発現を抑制した歯原性上皮細胞では皮膚や表皮の分化に関わる分子の発現が増加していた。これらの結果を確認するために、S100a6を抑制したSF2細胞では、EdU陽性細胞が大幅に減少し、細胞増殖が抑制されていた。また、S100a6を抑制したSF2細胞に対してqPCRにて遺伝子発現パターンを確認したところ、エナメル芽細胞マーカーの発現は抑制され、更に歯肉ではなく、皮膚と類似した遺伝子発現パターンを示した。これらの結果から、腫瘍マーカーであるS100a6は歯原性上皮細胞の細胞増殖を促進し、皮膚系細胞へと分化することを抑制して、エナメル芽細胞へと分化誘導して石灰化を行っている可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
CAGEシークエンスやsingle cell RNAシークエンスにて歯胚で発現している腫瘍マーカーのスクリーニングを行っているが、既に複数見つかっており、今後の詳細な解析のために、in silicoにて更なるセレクションを行っている。また、今回はS100a6に焦点を絞ったが、やはり腫瘍マーカーは歯原性上皮細胞をエナメル芽細胞へ分化誘導を行う事によって、石灰化を促進している可能性が示唆された。今後も引き続き、エナメル芽細胞における腫瘍マーカーの役割について検討を行っていく予定である。
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今後の研究の推進方策 |
① 前年度に引き続き、CAGEシークエンスやsingle cell RNAシークエンスの結果から、歯胚で発現が上昇している腫瘍マーカーのスクリーニングを行う。 ② S100a6以外のその他腫瘍マーカーに対して、エナメル芽細胞での発現を確認した後に、機能を解析し、腫瘍化と石灰化との関連性を明らかにする。 ③ 現在、複数のエナメル上皮腫の細胞株を有している。エナメル上皮腫はエナメル芽細胞とは異なり、石灰化されずエックス線透過像を示す。この事から、エナメル芽細胞では腫瘍化することにより石灰化が抑制されていると考えられる。そこで、エナメル芽細胞で発現していた腫瘍マーカーがエナメル上皮腫ではどの様に発現するかを明らかにする。 ④ ③で得られた結果から、発現が認められた分子に関しては、発現を抑制することによって、腫瘍細胞に細胞増殖・アポトーシス・細胞分化・石灰化など、どの様な変化があるのかを解析する。逆に発現が認められなかった分子に関しては、発現ベクターを導入して、腫瘍細胞にどの様な変化が見られるのかを解析する予定である。
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