研究課題/領域番号 |
23H03124
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
中村 桂子 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 教授 (00211433)
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研究分担者 |
清野 薫子 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 講師 (10508336)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | mHealth / 地域保健ボランティア / タンザニア / 高血圧 / 糖尿病 / 低中所得国 / 社会実装過程の検証 |
研究実績の概要 |
生活習慣病による疾病負荷は低中所得国において増大している。携帯電話を使用し疾病管理や予防を行う[mHealth]と地域保健ボランティア(CHW)の支援によりセルフケア行動と服薬順守を改善し、患者の健康状態と疾病管理、地域の疾病対処機能を改善するための地域包括mHealthケアシステム(ComHIC)を開発した。タンザニアのドドマ県においてComHICによる地域介入を12か月間実施して得られた患者とCHWのデータに基づき、(1)高血圧・糖尿病患者の疾病管理への有効性、(2)CHWの能力向上にもたらす効果を検証した。 介入前高血圧の患者358名の内、介入群(n=213)の介入前後の収縮期血圧(SB)の平均値は158.6 mmHg、138.7 mmHg、拡張期血圧(DB)の平均値は、95.0 mmHg、84.0 mmHg、対照群(n=145)の介入前後のSBの平均値は160.8 mmHg、144.7 mmHg、DBの平均値は96.6 mmHg、87.4 mmHgであった 。介入群・対照群の双方において介入後にSBおよびDBの有意な低下がみられ、その変化量は、介入群において対照群と比較し有意に大きかった。介入前調査時にHbA1値が6.5 %以上であった患者189名のうち、介入群(n=126)の介入前後のHbA1cの平均値は9.3%、9.0%、対照群(n=63)の介入前後のHbA1cの平均値は9.7%、9.7%であった。高血圧、糖尿病のいずれにおいても患者の疾病管理に有効であることを確認した。 39 人のCHWを対象としたケア研修への参加効果の分析の結果、研修参加後の糖尿病・高血圧に関する知識スコア、ケア能力スコアは研修前より高かった(p<0.001)。帰納的分析の結果、CHWの学習に対する熱意や CHW とトレーナーとの相互関係の構築が CHW の知識習得に寄与していると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
予定していた分析が進捗し、ComHIC介入開始後12か月間の介入期間に得られたデータと、介入終了後に実施する介入後の患者健康調査、CHW調査に基づき(1)高血圧・糖尿病患者の疾病管理への有効性、(2)CHWその他の地域キャパシティの向上にもたらす効果を検証した。 分析結果をComHIC介入に関わる関係者に共有し、社会実装に必要な条件について調査を実施した。社会実装の適用範囲、採用性、忠実性、費用および持続可能性の観点から評価する手法の設計に必要な情報を得た。これにより計画どおり調査設計をすすめる準備ができた。
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今後の研究の推進方策 |
介入による患者の疾病管理への効果、CHW研修の効果の検証結果をふまえ、以下の分析を行う。 【実装プロセス評価】患者データ、医療データ、mHealth履歴データ、CHW活動記録によりRe-AIM調査指標を算出して実装プロセスの評価を行い、ComHICの介入の、持続可能性、維持費用、適切性、実施忠実度、ステークホルダーの受容性、適用範囲、採用性を明らかにする。行政組織、医療機関、住民組織の関係者へのインタビュー調査を行い、タンザニアにおける実装評価を行い、実装プロセスのフレームワーク分析(Consolidated Framework for Implementation Research: CFIR)を行う。 【ComHIC実装の推進条件の検証】実装関係者が参加するワークショップを実施し、ステークホルダー分析、実装評価結果の共有を行い、ComHIC実装の推進条件を検討する。ComHICのタンザニアにおける社会実装研究の全過程を踏まえ、地域の包括的な介入プログラムについてその社会実装を研究する具体的手法のモデルを提案する。
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