研究実績の概要 |
ヒト胆管細胞株MMNK-1細胞の単培養、およびMMNK-1細胞とヒトTHP-1単球由来マクロファージとの共培養を用いた。1,2-DCPおよび比較のために同じ濃度のDCP、TCP曝露群も作成した。胆管細胞のDNA損傷度合の評価ためDNA二重鎖切断マーカーγ-H2AX陽性Foci、γ-H2AX汎核陽性細胞の数も数えた。動物実験ではTNFαノックアウトマウスおよび野生型マウスをそれぞれ無作為に4群に分け、1,2-DCPに0、125、250、500mg/㎏体重、1日1回、週5日、13週間、強制経口投与した。 曝露終了後、肝臓切片を作成し、HE、鉄染色および免疫組織化学による病理組織学的検索を行った。 MTS アッセイの結果、1,2-DCPを曝露した共培養胆管細胞では対照群と比較すると各濃度において細胞生存率が増加していたのに対し、0.8mMの1,2,3-TCPを曝露した共培養で細胞生存率が減少していた。DCMでは単培養、共培養ともに変化を確認できなかった。γ-H2AX陽性Foci数では、0.4mMの1,2-DCP、DCM、1,2,3-TCPを曝露した共培養胆管細胞でFoci高度発現細胞が対照群と比較すると顕著に増加していた。Foci高度発現細胞における重回帰分析の結果では、有意な交互性を確認できた。γ-H2AX汎核陽性細胞の発現数では1,2-DCPを曝露した共培養胆管細胞でγ-H2AX汎核陽性細胞が濃度依存的に減少していたが、他の物質では確認できなかった。動物実験では野性型マウスにおいては500mg/kg投与群において一時的な体重減少がみられたが、TNFα-KOマウスにおいては影響が抑えられた。肝重量はWild-typeとTNFα-/-どちらにおいても増加が見られた。野生型、TNFα-KOマウス共にKi67陽性肝細胞数が1,2-DCP投与量依存的な増加を示した。Wild-type、TNF-/-共にγH2AX陽性肝細胞数が1,2-DCP投与量依存的な増加を示した。ベルリンブルー染色を行うと1.2-DCPを曝露したグループでは、組織障害部位だけでなく、通常に見える細胞にも微弱な鉄陽性の反応が見られた。
|