研究課題/領域番号 |
23H03241
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
前島 洋 北海道大学, 保健科学研究院, 教授 (60314746)
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研究分担者 |
真先 敏弘 帝京科学大学, 医学教育センター, 教授 (00585028)
榊間 春利 鹿児島大学, 医歯学域医学系, 教授 (10325780)
齋藤 貴子 (千見寺貴子) 北海道大学, 保健科学研究院, 教授 (40452982)
高松 泰行 中部大学, 生命健康科学部, 准教授 (40802096)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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キーワード | リハビリテーション / 再生医学 / 脳卒中 / 間葉系幹細胞 / 神経栄養因子 |
研究実績の概要 |
初年度は、脳出血モデルラットを用いた骨髄由来間葉系幹細胞(MSC)移植研究に先立ち、MSC移植と薬理的神経活動興奮性の制御がレシピエント脳に与える影響を精査することを目的とするin vitroレベルの実験環境の整備と細胞実験を進めた。従来使用の共用培養室では初代培養に対する制限があったことから、初代培養実験が可能なP1レベル実験室を新たに整備し、細胞実験として神経/グリア共培養下(模擬的脳環境)におけるMSCの動態とGABAA受容体阻害効果を検証することを目標とした。成体げっ歯類の大腿骨、脛骨より採取した骨髄よりMSCを単離、継体培養し、神経/グリア共培養への添加のため凍結保存を進めた。グリア細胞の準備として、4-6日齢の子ラット、マウスの大脳より採取した皮質細胞をCell strainerを通して分注、遠沈の後、得られた細胞懸濁液を培地で希釈して約2週間の培養を行うことでグリア細胞を作成した。初代培養神経細胞の準備として、グリア細胞の準備と並行して4-6日齢の子ラット、マウスの小脳より採取した皮質細胞を細胞懸濁、遠沈処理し、細胞懸濁液をF12、B-27添加培地で希釈して2週間の培養を行うことにより神経細胞を作成した。神経細胞における神経ネットワーク形成を確認の後、並行して準備したグリア細胞を懸濁し神経細胞培養デッシュに添加し共培養することにより、神経/グリア共培養条件(模擬的脳環境)を作成した。以上より、初代培養実験の整備のもと、MSCの単離と培養、神経/グリア共培養条件の確立に至った。一方、in vivo実験として、薬理的神経制御における予備実験として、脳卒中後の脳内における運動誘発性BDNF発現の影響についてBdnf-Luc Tgマウスを用いた生体脳イメージングにおいて半球間の非対称的発現性を検証した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
初年度は、脳出血モデルラットを用いた骨髄由来間葉系幹細胞(MSC)移植研究に先立ち、MSC移植と薬理的神経活動興奮性の制御がレシピエント脳に与える影響を精査することを目的とするin vitroレベルの実験環境の整備と細胞実験を進めることを目的としていた。具体的には、1)初代培養実験環境の整備、2)ラット骨髄由来間葉系細胞の単離と培養による移植細胞作製の確立、3)神経/グリア共培養(模擬的脳環境)の確立、4)神経/グリア共培養へのMSC添加培養によるMSCおよび模擬的レシピエント脳細胞の動態の検証、5)4)の共培養条件におけるGABAA受容体阻害剤であるL655,708投与によるMSCおよび模擬的レシピエント脳細胞の動態の検証を予定していた。このうち1)2)3)は達成した。一方、3)神経/グリア共培養(模擬的脳環境)の確立におい、安定した初代培養神経細胞作製のための細胞採取や培養条件の確立に時間を要したことから、4)5)については未完であった。このため、初年度の研究進捗状況は当初研究計画に対してやや遅れていると判断される。
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今後の研究の推進方策 |
初年度において未実施であったin vitro研究を継続し、神経/グリア共培養下(模擬的脳環境)における移植細胞の動態とGABAA受容体阻害効果の検証を推進する。4-6日齢ラットの大脳皮質細胞より作成したグリア細胞、および同ラット小脳皮質細胞より誘導した初代培養神経細胞を共培養し、移植レシピエント脳を模した神経系培養環境を整備する。GFP遺伝子導入された蛍光能を有す移植細胞を添加培養する。移植細胞として間葉系幹細胞(MSC)に加えて、オリゴデンドロサイトに代替し軸索再生阻害因子を発現することなく髄鞘化が期待されるシュワン細胞(SC)の添加も検討する。以上の培養環境にGABAA受容体阻害薬を培地に投与し、細胞移植と薬理的神経制御が移植細胞およびレシピエント細胞に与える効果について検証を進める。 In vivo研究として、脳出血(ICH)モデルラットにおける細胞移植、運動療法、薬理的神経制御による相乗的機能回復効果とその背景因子について検証を進める。ラットを対象に①細胞移植、②リハビリテーション(運動療法)、③GABAA受容体阻害薬投与を因子とする相互作用について、目的に応じた複数群を設定して以下の実験を実施する。ICHモデルラットに対して、ICH術同様のステレオタキシック、インジェクションシステムにより移植細胞を損傷脳領域に移植する。細胞移植術後、GABAA受容体阻害薬投与とトレッドミル運動による介入を実施する。神経学的機能評価を経時的に実施して各要因による機能回復への効果を検証する。その後、採取した脳切片を対象に①GFP陽性細胞数に基づく移植細胞生存率、②特異的マーカー抗体を用いた移植細胞の分化動態を組織化学的に検証する。更にレシピエント脳における可塑的機能修飾について、運動関連領野を含む大脳領域を対象に可塑的修飾について免疫組織化学的、分子生物学的検証を進める。
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