研究課題/領域番号 |
23H03302
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 群馬大学 |
研究代表者 |
奥西 勝秀 群馬大学, 生体調節研究所, 准教授 (50401112)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | サイトカイン / 免疫細胞 / GDF3 / ALK7 / 肥満・糖尿病 |
研究実績の概要 |
本研究は、脂肪蓄積機構における各種サイトカイン・免疫細胞の新奇生理作用を解明しようとするものである。R5年度には、次の研究結果を得た。まず、研究代表者がその存在を明らかにした、「ALK7活性化→脂肪細胞からのS100A8/A9の産生亢進→ATMのIL-1β産生亢進→ATMのGDF3産生亢進→脂肪細胞上ALK7の更なる活性化」という炎症性サイトカインを介した肥満増強のポジティブループの阻害が個体に与える影響を、そのループの一部を阻害する薬剤を肥満マウスに投与して検証した。そして、その阻害剤の投与により、肥満マウスにおける白色脂肪織の重量やGDF3産生が低下し、肝臓における炎症性サイトカインや線維化マーカーの遺伝子発現が低下することを見出した。また、脂肪細胞上のALK7シグナルが、白色脂肪細胞の褐色化促進作用を有するあるサイトカインの産生に及ぼす効果も検討した。そして、肥満マウスに変異AK7遺伝子を導入してALK7シグナルを阻害すると、白色脂肪織に存在する免疫細胞からの当該サイトカイン産生が有意に亢進することを見出した。研究代表者は、ALK7の阻害が白色脂肪細胞の褐色化を促進することを見出しており、その機序の一つとして、当該サイトカインの産生亢進を介している可能性が考えられた。更に、R5年度、及び、それ以前の検討から、Rab27エフェクターMunc13-4の新奇生理作用を明らかにした。すなわち、Munc13-4が、CD11c+抗原提示細胞からの制御性サイトカインIL-10の分泌を正に制御することで肥満に伴う脂肪識慢性炎症を抑制しており、その欠損では逆に、IL-10の分泌が低下し、脂肪識炎症が亢進する結果、GDF3産生が増強し、肥満が増悪することを明らかにし、Allergy誌で論文報告した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでに申請者が独自に蓄積してきた十分量の予備的知見を基に、R5年度には、綿密な実験計画を練ることができた結果、無駄なく、非常に効率的に研究を遂行することができた。そして、R5年度には、研究実績の項で触れたように、GDF3-ALK7経路の阻害の個体レベルでの有用性を確認し、ALK7によるサイトカイン産生制御を示唆する新奇知見を得ることが出来た。更に、Munc13-4の肥満制御作用という新奇生理作用を論文報告した。 以上の成果を踏まえると、本申請研究はおおむね順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
R6年度には、次の検討を行う予定である。まずは研究実績の項で触れたGDF3-ALK7経路の阻害剤に関して、多くの項目でまだ統計学的有意差が得られておらず、再現性確認の目的も含めて、同様の検討を繰り返す。そして、可能であれば、その他の阻害剤に関しても、肥満マウスにおけるその生理作用を検討する。ALK7の活性化によりその産生が抑制されていたベージュ化促進サイトカインに関しては、ALK7によるその産生制御機構を、当該サイトカインのレポーターマウスも利用しながら、明らかにしていく。また、Munc13-4以外のRab27関連分子に関しても、随時検討を行っていく。すなわち、高脂肪食負荷により誘導される肥満・糖尿病モデルにおける各分子の遺伝子欠損マウスの表現型をまず評価し、野生型との差を認めた遺伝子欠損マウスに関して、その機序を解明するために、個体・細胞両レベルでの各種検討を行う。
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