研究課題/領域番号 |
23H03308
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
飯島 弘貴 名古屋大学, 医学系研究科(保健), 客員研究者 (20816631)
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研究分担者 |
松井 佑介 名古屋大学, 医学系研究科(保健), 准教授 (90761495)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 力学的記憶 / 細胞外マトリックス / 加齢 / ネットワーク解析 |
研究実績の概要 |
変形性膝関節症に対する新しい治療戦略を追求する本研究では、加齢軟骨細胞の『力学的記憶』に焦点を当てている。硬い細胞外マトリックスが形成するこの力学的記憶の原因を取り除き、抗老化因子であるα-Klothoを中心に据え、細胞の本来の生物学的応答を引き出すことで、変形性膝関節症に対するメカノセラピーの治療効果を飛躍的に向上させることが期待されている。 初年度では、目標に向けた第一歩として、硬い細胞外マトリックスが軟骨細胞に与える応答をin situで推定するためのネットワーク解析手法を開発した。この手法により、加齢とともに硬さを増す細胞外マトリックスが軟骨細胞に影響を与え、ミトコンドリアの生成過程における機能障害が生じる可能性が示唆された。これに続き、ミトコンドリアの機能障害から発生する下流のシグナルを、シングルセルRNAシーケンスデータを基にした独自の手法で詳細に探索した。その結果、関節軟骨表層に局在するPrg4とその周辺分子を制御する転写因子が同定された。この関連性は、関節軟骨表層のATACシーケンスデータによって裏付けられた。さらに、これらのシグナル経路を制御する低分子化合物候補も複数同定した。 今後の調査では、これらの新規な因子と『力学的記憶』、そしてα-Klothoの関係性を深く掘り下げ、変形性膝関節症における病態理解を進めていく予定である。この研究から得られた知見は、新たな治療法や介入戦略の開発に向けて大きな前進をもたらす可能性がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定には軟骨細胞応答を推定するネットワーク解析は含まれていなかったが、従来の二次元培養の問題点を解決し、硬い細胞外マトリックスの下流における分子動態を推定する手法を開発したことで、次年度以降の解析につながる有力な因子を同定することができた。
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今後の研究の推進方策 |
次年度以降では、今年度同定した新たな因子と『力学的記憶』、そしてα-Klothoの相互関係を深掘りし、変形性膝関節症の病態理解を一層進展させる予定である。
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