研究課題/領域番号 |
23H03416
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
舘野 高 北海道大学, 情報科学研究院, 教授 (00314401)
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研究分担者 |
神保 泰彦 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 教授 (20372401)
村上 修一 地方独立行政法人大阪産業技術研究所, 和泉センター, 主幹研究員 (70359420)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 超音波トランスデューサ / 細胞内カルシウム |
研究実績の概要 |
本年度は,本計画期間の初年度であったことから,超音波刺激による脳活動誘発に関する基本的な予備実験を行い,研究計画全体における問題点の洗い出しを行った.具体的には,以下の4つの小課題に関する研究開発を実施した. (課題1)超音波を利用した脳刺激で聴覚末梢系の神経誘発活動を起こさずに,中枢神経系のみを活動させる刺激に関して動物実験を行い,その刺激条件を広範囲に探索して効果的な刺激条件を明らかにした.特に,市販のトランスデューサを使って齧歯類動物に超音波を印加し,聴覚の末梢系と中枢系の活動を同時に記録する実験系を構築し,動物実験を行った. (課題2)微細加工技術によって試作した微小トランスデューサの電気的および機械的な振動特性を計測し,脳活動を誘発する条件を満たしているかを実験的に評価した.その結果,音響圧強度が神経細胞の活動誘発には不足している結果となった為に,デバイス構造の修正と再設計を行った. (課題3)超音波の機械的な振動を駆動する小型ダイアフラム基板を試作し,その上に脳試料を置き,細胞内のカルシウム変動をイメージングする実験系を構築した.脳試料を置いた基板底部から超音波を印加することで,神経活動誘発の有無を細胞内カルシウム変動計測によって実験的に検証することが可能になった.ただし,課題2に関連して,小型ダイアフラム基板の音響圧出力の強度を向上させる必要があり,その実現が残されている. (課題4)頭部への超音波印加が聴覚中枢系の神経活動を誘起できるかを検証するために,聴覚末梢系由来の音情報伝達を薬剤で阻害した難聴モデルを効率的に作成する方法を検討した.その結果,難聴マウスを作成する薬理的な条件の候補を得ることができた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初に立てた実験計画の各項目を実施した結果,デバイスの試作以外では,予想された結果が得られた.このため,「概ね順調に進展している」と評価した.
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進の方針としては,前年度の超音波刺激による脳活動誘発に関する基本的な予備実験を基に,研究計画の各課題を着実に実行する.特に,以下の4つの具体的な小課題を実施する. (課題1)前年度は,市販の平面型トランスデューサを利用して,齧歯類のモデル動物に超音波を印加し,聴覚の末梢系と中枢系の活動を同時に記録する実験系を構築した.今年度は,この実験系を基に,複数個の小型トランスデューサを組み合わせ,脳内に集束超音波の定在波を効率良く生成する装置システムを構築し,動物実験によってその効果を評価する. (課題2)前年度に引き続き,微細加工技術によって試作した微小トランスデューサの電気的および機械的な振動特性をin vitro(シャーレ内)の実験系で計測する計画である.音響圧強度が不足していたため,試作トランスデューサの共振周波数のバラツキを抑えて,装置の性能を最大限引き出す実験方法を開発する. (課題3)課題2に関連して,小型ダイアフラム評価では,超音波の強度不足の欠点が判明したため,その強度を増加させる小型トランスデューサ構造を再検討し,再製作を試みる.また,小型ダイアフラム上に脳試料を置き,その底部から超音波を印加する実験を行い,超音波刺激が細胞内のどの様な圧力感受性のある受容体を活性化するかを実験的に明らかにする. (課題4)前年度に試作した生体脳への超音波印加装置を用いて,引き続き,頭部への超音波印加が聴覚中枢系の神経活動を誘起できるかを検証する.さらに,超音波の繰り返し刺激によって,聴覚皮質における可塑性を誘発できるかを検証する予備的な実験を行う.
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