研究課題/領域番号 |
23H03420
|
配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 京都工芸繊維大学 |
研究代表者 |
延原 章平 京都工芸繊維大学, 情報工学・人間科学系, 教授 (00423020)
|
研究分担者 |
鄭 銀強 東京大学, 大学院情報理工学系研究科, 准教授 (30756896)
西野 恒 京都大学, 情報学研究科, 教授 (60814754)
|
研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
|
キーワード | コンピュータビジョン / 偏光 |
研究実績の概要 |
コンピュータビジョンによる画像を用いた実世界3次元計測においては,これまで光線の投影経路と輝度変化がモデル化され,このモデルに立脚した計測アルゴリズムが研究されてきた.本研究はこれを拡張して偏光状態のモデル化を導入するとともに,そのモデルを活用した形状計測や素材認識アルゴリズムを実現することを目指している.2023年度は特に物体表面における偏光状態の変化をモデル化する新たな手法として,Fresnel Microfacet BRDFを新たに開発して,その有効性を定量的に検証することができた.Fresnel Microfacet BRDFのアイデアは,被写体表面の微細構造のモデル化にある.そもそも偏光観測が反射面の向きを知る手掛かりとなる根拠は,光の偏光状態が反射面の法線方向によって変化するという物理法則に立脚している.この原理自体は正しいものの,実際に画像として計測する場合,各画素は被写体表面上のある面積をもった領域から放射されるすべての光を積分することしかできないため,従来研究ではこの1画素に対応する範囲で物体表面が完全に均一な法線方向と反射特性を持つという理想状態を仮定してきた.しかし人の肌や衣服,コンクリート,木材など実世界を構成するほとんど全ての物質には微細な表面構造が存在し,1画素が計測する偏光情報は微細構造に起因する様々な法線方向による反射の影響を受けるため,この仮定が成立する被写体はごく限られている.そこでFresnel Microfacet BRDFでは1画素の計測範囲内に存在する微小面の法線の分布を一般化正規分布としてモデル化し,計測された偏光状態を最もよく説明することができるモデルパラメータを推定することで精緻な偏光BRDFを実現した.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当該年度は偏光反射モデルとしてのFresnel Microfacet BRDFを新たに考案することに成功し,これに立脚した3次元形状計測や素材認識などの実現に道筋をつけることができた.すなわち計測した偏光画像をもっともよく説明するFresnel Microfacet BRDFのモデルパラメータを推定することで,実質的に素材の認識に相当することが可能となるだけでなく,推定されたFresnel Microfacet BRDFを用いることで各画素における画素単位の法線方向と3次元形状を得ることができると期待できる.これらは申請書の研究計画に挙げた4つの研究課である(A)偏光反射モデル,(B)偏光計測モデル,(C)偏光を用いた形状計測,(D)偏光を用いた素材認識,のすべてについて,2024年度の計画を進めるうえで特段の遅れが生じていないことを意味している.以上により「おおむね順調に進展している」と報告する.
|
今後の研究の推進方策 |
2023年度に考案した偏光反射モデルとしてのFresnel Microfacet BRDFを用いると,計測した偏光画像をもっともよく説明するようにそのモデルパラメータを最適化することで,各画素の偏光反射係数や法線分布関数を得ることができる.これらの情報は材質や対象表面の粗さといった素材情報に対応しているため,Fresnel Microfacet BRDFのパラメータ推定を通じて実質的に素材認識を行うことができると期待することができる.また各画素で得られた法線分布関数の主方向はその画素のマクロな視点での法線方向であるため,Fresnel Microfacet BRDFのパラメータ推定と3次元形状計測を同時に行うことができれば,画素単位での法線情報を含んだ精緻な3次元形状計測をも実現することが期待できる.これらはいずれも申請書における2024年度の研究計画に沿ったものであり,当初の計画に従って今後も研究を推進する.
|