本年度は非線形音響効果を用いた屋内環境計測において,結合波を用いた発音体の移動速度計測における2022年度の実験的検討についての再検証を行い,その結果発音体の放射音とこれに重畳する固定超音波音源が放射する強力超音波の場が作り出す差音の周波数が発音体の移動速度の固定音源方向成分に比例して大きくなり,かつこれが差音と同等の周波数の音を放射する発音体の示すドップラー効果に比べ極めて大きな速度対周波数変動比率を有することを確認した.またこの効果は通常のドップラー効果とは異なり観測位置によらずに同じ周波数変動となることを明らかにした.これは送受信機の位置関係について従来のドップラーシフトに基づいた手法が大きく制限を受けることに対し,音源移動による一次波場の周波数変動は差音場そのものではなく差音のソース項の放射周波数に影響を与えることに着目することで差音自体には(観測位置に観測周波数が依存するという意味での)ドップラー効果が起きていないことを利用した新しい計測手法となっている. これに加え,放射力によってトラップした軽量浮上体に備えた小型センサを用いて環境中の音場を可視化する試みについて2022年度末に行われた実験的検証の結果を整理し,より発展的な課題として放射力を有する超音波焦点による水平方向位置決め効果を活用し,かつセンサ自体を無線化することで広範囲の環境データを非接触に計測する方略について検討を行い,空中センシングユニットのプロトタイプデバイスの設計に着手している.
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