研究実績の概要 |
本研究は、光学活性L-乳酸を含む有機酸をターゲットとする複合微生物を用いた微生物プロセスをモデル系としてその制御方法や最適化とともに、『複合微生物工学』の体系化を図ることを目的としている。2023度は、1.様々な基質・未利用資源を用いたバイオプロセスの開発、2.連続発酵法による有機酸生産性の向上に関する研究開発を実施した。 1.様々な基質・未利用資源を用いたバイオプロセスの開発 バイオマスを構成する様々な炭素源を用いた回分発酵を行い、炭素源が生産物および細菌叢などの発酵挙動におよぼす影響を調べた。リグノセルロース系・デンプン系・藻類系バイオマスを構成する、単糖、二糖、多糖、糖アルコール等を炭素源に用いた。発酵は種菌として未分離のコンポストを使用し、50℃、嫌気条件下で7日間、回分発酵を行った。その結果、デンプン・グルコース・キシロース・セロビオース・キシロオリゴ糖・グルコース+キシロース・セロビオース+キシロース、マンニトールでは、炭素源が減少して乳酸が増加し、最優占菌はWeizmannia coagulansであった。キシラン、アルギン酸ナトリウムでは、再優占菌は異なるものの、酢酸が主要有機酸として生産された。 2.連続発酵法による有機酸生産性の向上 生産性の優れた連続発酵において、固有パラメータである希釈率(D)が有機酸生産性および細菌叢におよぼす影響を解明した。発酵は種菌として 未分離のコンポストを使用し、50℃、嫌気条件下で1日間、回分発酵を行ったのち、連続発酵にpH7.0で制御しながら、D = 0.05, 0.15, 0.40 h-1で検討した。その結果、優占細菌種は D 値によって変化し,D 値の増加に伴い,種数が減少した.全 D値で乳酸が主生産物となり,D値の増加に伴い,高い乳酸選択性が得られた.また、回分発酵法よりも高い乳酸生産性が連続発酵法において得られた。
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