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2023 年度 実績報告書

運動野における体部位間抑制の機能的役割とそのトレーナビリティの検証

研究課題

研究課題/領域番号 23H03706
配分区分補助金
研究機関国立研究開発法人情報通信研究機構

研究代表者

内藤 栄一  国立研究開発法人情報通信研究機構, 未来ICT研究所脳情報通信融合研究センター, 室長 (10283293)

研究期間 (年度) 2023-04-01 – 2027-03-31
キーワード体部位間抑制 / 不随意筋活動 / 高齢者 / 運動機能補完 / 機能的MRI
研究実績の概要

脳神経系の抑制機能は、脳システムが適切に作動するために必須な機能である。中でも、脳の機能領域間で起こる抑制は、ある領域が、課題に無関係な領域の活動を抑制して、この領域からの干渉を受けずに、課題をうまく遂行するために存在すると想定されているが、その理解は大幅に遅れている。本研究では、運動野内での体部位間抑制に着目し、健常若年成人と高齢者を対象として、機能的MRI計測、筋電図計測、神経修飾法という複数の手法を駆使した研究を展開している。2023度は、右利き若年成人と高齢者を対象として、手の複雑運動時に観察される、リラックスした反対の手からの不随意筋活動を計測した。その結果、手の左右に関わらず、若年成人では不随意筋活動はみられないが、高齢者では顕著にみられることがわかった。この結果は、左右運動野手領域間の体部位間抑制は、運動には無関係の反対の手の筋活動を抑制しており、これが減弱している高齢者では不随意筋活動が出現することを示唆した。また、右利き若年成人と高齢者が、右手の単純運動および複雑運動を行う際の脳活動を機能的MRIで計測した。その結果、単純運動中には若年成人では同側運動野手領域の抑制が見られるが、高齢者ではこれが消失していること、複雑運動課題中には、若年成人は半球間抑制を脱抑制することで同側の運動前野を動員して運動機能の補完をしているが、高齢者の脳ではこのような半球をまたぐ運動機能補完はしていないことがわかった。これらの結果は、高齢者の脳では運動野内での体部位間抑制機能が低下しており、この機能低下によって同側運動野を動員することによる運動機能補完機能も低下していることを明らかにした。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

2023年度は、右利き若年成人と高齢者を対象として、手の複雑運動時に観察される、リラックスした反対の手からの不随意筋活動を計測し、手の左右に関わらず、若年成人では不随意筋活動はみられないが、高齢者では顕著にみられることを明らかにし、左右運動野手領域間の体部位間抑制は、運動には無関係の反対の手の筋活動を抑制しており、これが減弱している高齢者では不随意筋活動が出現することを示した。また、右利き若年成人と高齢者が、右手の単純運動および複雑運動を行う際の脳活動を機能的MRIで計測し、単純運動中には若年成人では同側運動野手領域の抑制が見られるが、高齢者ではこれが消失していること、複雑運動課題中には、若年成人は半球間抑制を脱抑制することで同側の運動前野を動員して運動機能の補完をしているが、高齢者の脳ではこのような半球をまたぐ運動機能補完はしていないことを明らかにした。これらの結果により、高齢者の脳では運動野内での体部位間抑制機能が低下しており、この機能低下によって同側運動野を動員することによる運動機能補完機能も低下していることを明らかにすることに成功している。

今後の研究の推進方策

2023年に得られた、高齢者でみられる不随意筋活動と運動機能補完機能の低下に関する知見の論文化を進める。これと並行して、右手複雑運動時の脳活動を機能的MRIで計測し、同時に左手からの不随意筋活動を計測する。若年成人に比べて高齢者で顕著に、同側(右)運動野の活動が増大(=左運動野から右運動野への抑制が減弱)しており、この活動増大と左手からの不随意筋活動との間に因果的な関係があるかを検証して、不随意筋活動が脳内の体部位間抑制の減弱度合いの簡便な指標になることを証明する。
この知見を基に、脳機能検診などで高齢者の脳内抑制機能の状態を簡便に評価することができる、数μVレベルでの筋電図計測が可能で、不随意筋活動の積分値や相互相関の容易な解析が可能な不随意筋電図計測解析装置を開発する。
また、加齢に伴い機能が低下した体部位間抑制はトレーニングや抑制性神経修飾によって再活性化でき、他の身体部位の運動パフォーマンスを向上させるかを検証する。具体的には、高齢者で、右手複雑運動中に右運動野左手領域の活動を抑制性神経修飾法で抑制する。この介入の後、右運動野左手領域の活動が抑制され、左手からの不随意筋活動が減弱し、因果的に右手複雑運動のパフォーマンスが改善するかを検証する。

  • 研究成果

    (9件)

すべて 2023

すべて 雑誌論文 (2件) 学会発表 (7件) (うち国際学会 4件、 招待講演 3件)

  • [雑誌論文] 運動イメージをリハビリテーションで有効に使うための基礎知識 ―感覚誘導型イメージトレーニングの提案―2023

    • 著者名/発表者名
      内藤栄一
    • 雑誌名

      Journal of Clinical Rehabilitation

      巻: 32 ページ: 740-750

  • [雑誌論文] 人間パフォーマンス向上プロジェクト:高齢者の脳機能を改善して認知・運動機能を向上させる2023

    • 著者名/発表者名
      内藤栄一
    • 雑誌名

      NICT NEWS 未来ICT特集号

      巻: 1 ページ: 6-7

  • [学会発表] 巧緻的な運動課題により誘発されるMotor overflowの加齢変化2023

    • 著者名/発表者名
      静 雄介、武村和磨、苗村恭暉、和田岳大、藤川翔也、中野英樹、内藤栄一
    • 学会等名
      第28回日本基礎理学療法学会
  • [学会発表] 脳の身体認知と運動機能発達の新しい視点2023

    • 著者名/発表者名
      内藤栄一
    • 学会等名
      第53回小児神経学セミナー
    • 招待講演
  • [学会発表] 身体図式再考~脳内身体表現を理解して介入を考える~2023

    • 著者名/発表者名
      内藤栄一
    • 学会等名
      第12回ボバーズ研究会学術大会
    • 招待講演
  • [学会発表] Effect of reducing paralyzed hand spasticity after stroke: Comparison of visual and proprioceptive inputs2023

    • 著者名/発表者名
      Hideki Nakano, Kotaro Nakagawa, Munenori Nagashima, Eiichi Naito
    • 学会等名
      The 2nd International Symposium on Hyper-Adaptability
    • 国際学会
  • [学会発表] Plasticity and trainability of human interhemispheric interaction between two precentral hand regions2023

    • 著者名/発表者名
      Eiichi Naito
    • 学会等名
      The 2nd International Symposium on Hyper-Adaptability
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] Understanding the Changes in Motor Overflow with Aging and Its Underlying Mechanism based on Electromyography Signals2023

    • 著者名/発表者名
      Jihoon Park, Hideki Nakano, Eiichi Naito
    • 学会等名
      The 2nd International Symposium on Hyper-Adaptability
    • 国際学会
  • [学会発表] Inter-regional difference in involvement of ipsilateral sensorimotor cortices for finger coordination movement and its aging-related change: Importance of ipsilateral dorsal premotor cortex2023

    • 著者名/発表者名
      Gen Miura, Tomoyo Morita, Jihoon Park, Eiichi naito
    • 学会等名
      The 2nd International Symposium on Hyper-Adaptability
    • 国際学会

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公開日: 2024-12-25  

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