研究課題/領域番号 |
23H03762
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
田中 浩基 京都大学, 複合原子力科学研究所, 教授 (70391274)
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研究分担者 |
川端 信司 大阪医科薬科大学, 医学部, 准教授 (20340549)
増田 明彦 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 計量標準総合センター, 主任研究員 (70549899)
黒澤 俊介 東北大学, 未来科学技術共同研究センター, 特任准教授 (80613637)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | BNCT / ホウ素中性子捕捉療法 / 中性子線量当量率モニタ / リアルタイム中性子モニタ / シンチレータ |
研究実績の概要 |
通常の中性子サーベイメータよりも小型で1 桁以上高い線量率、倍以上の最大エネルギーへの適応、高いガンマ線バックグランド下での中性子測定を可能とする新しい中性子周辺線量当量率モニタを構築することを目的としている。 中性子の周辺線量当量を測定するには、国際放射線防護委員会(ICRP) が定めた中性子フラックス-周辺線量当量率換算係数曲線に良く近似した、中性子エネルギー応答関数を構築する必要がある。本研究においては、まずモンテカルロシミュレーションにより、ICRP の換算係数に近い応答関数を形成する減速材のサーベイを行った。減速材の中心に微小シンチレータを設置し、減速材の材質、形状を変化させながら、単色の中性子を入射させ、入射中性子エネルギー毎の微小シンチレータのカウント数を導出することで、応答関数を導出した。 減速材の材質は中心部分からポリエチレン、酸化ガドリニウムもしくは炭化ホウ素、タングステン、ポリエチレンの層状構造とした。主に熱外中性子エネルギーよりも高い領域において、ICRPの換算係数に近似可能な構成となっている。また、単一の検出器では熱中性子領域の近似を行うことが困難であるため、熱及び熱外中性子エネルギー領域用の検出器としてポリエチレンのみの減速材を採用した。上記の熱外中性子エネルギー領域以上に最適化された検出器と組み合わせることで、熱から高速中性子エネルギー領域の応答関数を構築することが可能となった。 また、熱中性子検出器を構成するシンチレータの選定を行い、現在用いられているシンチレータよりも発光量が高く、減衰時間が短い新規シンチレータについて探索した。潮解性のあるシンチレータではあるが、ガンマ線と弁別して測定できる高速応答可能なシンチレータを選定することができた。石英ファイバーに設置したモニタを試作し原子炉中性子源を用いて特性試験を実施し、良好な性能が得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は加速器BNCTの照射場に適応可能な新しい中性子周辺線量率モニタを構築し、照射場の特性を明らかにすることを目指している。実施する項目としては、ICRPの換算係数に近似した検出器の設計、新規シンチレータの選定、これらを組み合わせた中性子周辺線量率モニタの構築と特性試験、さらに実際の臨床の場での適応を掲げている。本年度はモンテカルロシミュレーションによる検出器の設計に成功し、新規シンチレータの特性試験も実施することができ、順調に研究が進められたと評価できる。
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今後の研究の推進方策 |
最適化した検出器の減速材の構成を元に、システムを構築する予定である。熱外及び高速中性子の減速材にタングステンを使用する必要があるが、タングステンは硬度が高く容易に加工することが困難であるため、タングステン粉末を用いて成形することを予定している。検出器のサイズを小さくするため、密度を上げる必要があるが、様々な加工・成形方法を模索しながら、システムの構築を実施する予定である。 また、新しいシンチレータと組み合わせることで、新しい周辺線量率モニタを構築し、原子炉中性子源、加速器中性子源での特性試験を実施する予定としている。
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