研究課題/領域番号 |
23H03791
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 国立障害者リハビリテーションセンター(研究所) |
研究代表者 |
高嶋 淳 国立障害者リハビリテーションセンター(研究所), 研究所 福祉機器開発部, 研究員 (90711284)
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研究分担者 |
緒方 徹 東京大学, 医学部附属病院, 教授 (00392192)
眞田 一志 横浜国立大学, 大学院工学研究院, 教授 (30187265)
倉林 大輔 東京工業大学, 工学院, 教授 (00334508)
白銀 暁 国立障害者リハビリテーションセンター(研究所), 研究所 福祉機器開発部, 研究室長 (90404764)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 肢体不自由者 / 健康指標 / むくみ計測 |
研究実績の概要 |
本研究は,体調不安を抱えながら手動車椅子で日常生活をされる重度肢体不自由者に対し,定量的な体調評価指標を開発すること,および日常活動履歴と体調評価指標との関連性を明らかにすることを目的とする. これまでに我々は,重度肢体不自由者に発生する慢性的な下肢の「むくみ」,すなわち浮腫が体調評価と関連している可能性を見出した.そこで,その可能性を精査し計測指標として昇華するために(A) 臨床現場で日常的に計測できる浮腫の定量計測手法を開発し,日々の浮腫の変動を精密に計測することによって,(B) 浮腫が体調を代表する指標に足るか検証をする.そして,(C) 日常生活における身体活動との関連性を調査することで体調悪化要因の特定をめざす. 本年度は,(B)の達成を目指し(A)と(C)を重点的に進めた.(A)として,近年安価かつ高精度な3Dスキャナに着目し,これらによる計測と従来手法による計測の繰り返し精度を検証した.具体的には,変形しない固い足部のマネキンを用いて,3Dスキャンした3Dデータの体積と従来手法である簡便なFoE法,高精度であるが計測が困難な水槽排水法による計測を行い,3Dスキャンによる計測が水槽排水法と同等程度の計測分解能と繰り返し精度があることを確認し,(B)の実現に近づけた. (C)として,重度肢体不自由者を対象とした日常生活における車椅子加速度データから自力走行している区間のラベリングを自動化する手法を構築した.これにより身体活動を数値化する筋道が立った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の研究はおおむね順調に進展した. 本年度予定していた(A),(B),(C)の実施計画は滞りなく実施できた. 具体的には,(A)のための3Dスキャンによる計測精度とばらつきを検証は,水圧で変形・浸水しない足部だけの模型を用い,模型の全周3Dスキャンデータの体積計算結果と水槽排水法による体積計算結果を比較することで,3Dスキャンの精度が十分であることを確かめた. また,(B)のために健常者を対象として,FOE法および3Dスキャンによる計測手法を人体に対して実施したが,当初実験に用いていた3Dスキャナは,計測データの形状安定性は計測者の手技に強く依存していることが分かった.そのため,実験の円滑な遂行が困難になっていた.それに対し,安定性の高い3Dスキャナを再度選定しなおして調達することで一定の計測安定性を担保することができた. (C)のために手動車椅子に慣性計測装置,温湿度計などを基本とするセンサを配置し,土日をまたぐ連続3日間以上のデータを計測・蓄積できる装置を開発する予定であったが,この仕様を満たす市販のセンサが調達できたため開発を省略し,実験のプロトコルの作成を進めた.
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今後の研究の推進方策 |
本研究は,体調不安を抱えながら手動車椅子で日常生活をされる重度肢体不自由者に対し,下肢の浮腫と日常活動量と体調との関連性を明らかにすることを目指している.そのために(A) 臨床現場で日常的に計測できる浮腫の定量計測手法を開発し,日々の浮腫の変動を精密に計測することによって,(B) 浮腫が体調を代表する指標に足るか検証をする.そして,(C) 日常生活における身体活動との関連性を調査することで体調悪化要因の特定をめざす. 来年度は,(A)および(B)に対して,健常者を対象とした3Dスキャンを実施し,複数回計測した3Dスキャンデータの定量的比較方法を検討する.具体的には,関節など可動部による変形,浮腫により外形の変化などが起きることを考慮した足部形状のマッチング手法を開発する. また,計測姿勢による測定部位の変形の影響も考慮し,計測プロトコルを作成することとする. (C)に対して,車椅子自力駆動時の加速度から特徴量の抽出を試みる.
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