研究課題
地球温暖化対策の一環として化石燃料の燃焼時に発生するCO2の排出量削減を目的に火力発電システムや航空機ジェットエンジンの稼働温度は熱効率向上に向け高温化する一方である.また,再生可能エネルギーとの共存や航空機の中短距離運行頻度の増加で,燃焼危機に使用される耐熱合金には高温での頻繁な出力変動に起因したクリープ疲労負荷が作用し,劣化損傷の加速に伴う破断寿命の激減が発生し始めている.本研究は,従来の合金結晶粒内の平均的な塑性変形に基づく転位の運動挙動に基づく損傷解析に対し,材料内の微視的結晶組織分布に基づく局所的な歪み場に着目したWeak spot解析という独自の視点を加え,材料内に局在的に発生する歪みエネルギーの集中場を定量的に論じることで破壊の加速現象を整理し,本定義に基づき劣化損傷を定量化するとともに残存寿命を評価するという挑戦を行なったものである.多結晶材料中に存在するWeak spot(再弱点)の同定を定量的に行い,破壊加速機構の定式化に挑戦する.電子線後方散乱回折(EBSD)技術を活用し,多結晶材料内の局所的な劣化損傷過程を可視化することで,このWeak spotの可視化と,着目したWeak spotを収束イオンビームで切り出し,局所強度を電子顕微鏡内での微小引張試験技術で定量的に測定することで,破壊の律速因子を定量的に解明した.これにより材料内部での初期亀裂の発生寿命の定量的評価が可能となり,従来の初期亀裂の存在を仮定した破壊力学に基づくマクロスケールの亀裂進展挙動解析技術と一体化させることで,複数の破壊過程(主として粒内割れと粒界割れ)が混在する複雑な破壊過程を体系的に解釈分析できる評価技術が構築できた.今後,様々な産業分野使用される高温機器の安全で安心な稼働を保証できる革新的な健全性設計技術への展開も期待できる.
すべて 2023 その他
すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 5件、 査読あり 5件、 オープンアクセス 5件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 3件、 招待講演 1件) 備考 (1件)
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