研究課題/領域番号 |
23KF0042
|
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
平方 寛之 京都大学, 工学研究科, 教授 (40362454)
|
研究分担者 |
XU TAO 京都大学, 工学研究科, 外国人特別研究員
|
研究期間 (年度) |
2023-04-25 – 2025-03-31
|
キーワード | 二次元材料 / 強誘電性 / 磁性 / マルチフィジックス特性 / 第一原理計算 |
研究実績の概要 |
本研究は、二次元材料に代表されるナノ構造体の力学的変形特性と機能との相関性(マルチフィジックス特性)を解明することで、実現困難とされてきたナノスケールの強誘電(圧電)性を負荷と構造の設計によって材料力学的に実現することを目指す。 初年度は、二次元材料に対する解析研究基盤の構築と基礎特性の評価を行った。当該研究員が有する第一原理解析プログラムを二次元材料評価用に改良し、原子層厚の二次元構造の精密解析基盤を構築した。原子層構造強誘電材料をモデリングするとともに、本解析技術を用いてその強誘電分極特性を原子・電子レベルから解析した。面内負荷によって二次元材料に生じる様々なバックリングパターンにより、スキルミオンやメロンといった位相幾何学的特徴を持ったトポロジカル分極構造が誘起されることを明らかにした。分極スキルミオンは負の誘電率やテレポーテーション現象などの特異な機能を生み出す先端物性の1つであり、この新機能を機械的変形によって創発・制御できることを示した。また、二次元材料に偏在する格子欠陥や余剰電子・正孔では同部での局所的な変形集中により、3 nm以下のさらに微小な分極スキルミオンやメロン構造を誘起できることを示した。以上のように、二次元材料では、従来の三次元結晶材料では有り得ない低次元構造固有の新奇トポロジカル物性と機能を生み出し得ることを明らかにし、これらが主として変形によって制御・設計し得ることを示した。これらの成果を、ACS NanoやPhys. Rev. Lett.などの波及効果の高い国際論文誌に掲載した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2023年度の研究計画は、1.二次元材料の原子・電子レベル解析技術と計算環境の構築、2.二次元材料の強誘電物性評価とひずみ負荷応答特性の解明であった。研究実績欄に記載のとおり、これら2項目について予定どおり実施し、二次元材料特有のトポロジカル物性の発現に成功している。よって、研究は順調に進展していると判断できる。
|
今後の研究の推進方策 |
2024年度の研究計画は、2023年度に引き続き、1. 二次元材料の強誘電物性とひずみ負荷応答特性の評価、2.それらの特異な新奇物性発現の原子・電子論的メカニズムの解明、3.より低次元の1次元構造体への発展、である。2については既に予備的な検討を開始しており、そのメカニズムの一端を捉えつつある。3についても検討を開始しており、VOF3ナノワイヤ等にて大きなエネルギー貯蔵可能性が見え始めている。よって、計画は十分に達成可能であると考えている。
|
次年度使用額が生じた理由 |
計算プログラムの改良により、当初予定よりも効率的に二次元材料の解析が可能になったため。一方、2024年度は、解析モデルの大規模化や解析データの増大により、計算メモリ・記録デバイスの増設や論文掲載料等が予定されており、このために利用する予定である。
|