研究課題/領域番号 |
23KF0095
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研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
大矢根 綾子 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 材料・化学領域, 総括研究主幹 (50356672)
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研究分担者 |
BANERJEE KAUSHITA 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 材料・化学領域, 外国人特別研究員
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研究期間 (年度) |
2023-04-25 – 2025-03-31
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キーワード | アパタイト / 足場材 / 歯周組織再生 / アスコルビン酸 / 薬物 / 成膜 / コラーゲン / 過飽和溶液 |
研究実績の概要 |
研究代表者らは最近、リン酸カルシウム過飽和溶液を用いて作製されたアパタイト成膜足場材(コラーゲンスポンジ)が、優れた歯周組織再生能を示すことを明らかにした。本研究では、アパタイト成膜足場材に種々の薬物を担持・複合化することによって、より高品位な歯周組織再生用足場材を創製することを目的とする。 初年度(2023年度)は、1つ目の担持薬物としてL-アスコルビン酸リン酸エステルマグネシウム塩n水和物(AsMg)を用い、X.P. Wangらの既報技術およびJ.A. Nathanaelらの既報技術を参考に、AsMg担持アパタイト成膜足場材の作製条件検討とin vitro機能評価を進めた。具体的には、まず、足場材となるコラーゲンスポンジにプラズマおよび交互浸漬処理を施すことでリン酸カルシウムをプレコーティングした後、同スポンジを、AsMg添加リン酸カルシウム過飽和溶液に浸漬し、成膜を行った。成膜後の足場材表面の構造・組成を、走査電子顕微鏡、エネルギー分散型X腺分光分析装置、X線回折装置等を用いて分析すると共に、担持されたAsMgの量を紫外-可視分光分析により定量した。これらの結果から、過飽和溶液へのAsMg添加濃度が、足場材表面におけるアパタイト形成能およびAsMg担持量に与える影響を明らかにし、成膜条件の絞り込み・選定を行った。次に、選定された条件にて作製されたAsMg担持アパタイト成膜足場材を用い、AsMg徐放挙動(生理食塩水中)ならびに細胞親和性・増殖性の評価を進めた。得られたin vitro機能評価の結果に基づき、次年度の研究で用いるAsMg担持アパタイト成膜足場材を選定した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1つ目の担持薬物としてAsMgを用いた検討を進め、AsMgを有効濃度で徐放するAsMg担持アパタイト成膜足場材の作製条件を見出し、基本的なin vitro機能評価を完了した。次年度に向けて、2つ目の担持薬物を用いた予備検討(定量法の確認、複合化方法の検討等)も進めており、概ね順調と評価した。
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今後の研究の推進方策 |
2024年度は、前年度(2023年度)の研究において選定されたAsMg担持アパタイト成膜足場材に、2つ目の薬物の担持・複合化を試みる。得られた足場材について、前年度と同様の方法で構造・組成分析およびin vitro機能評価を進めると共に、PCRによる細胞分化挙動評価も行う(共同研究先である北海道大学大学院歯学研究院にて実施予定)。得られた結果をまとめ、高効率・高品位な歯周組織再生のための多剤徐放性アパタイト成膜足場材の設計・構築指針を明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
2023年度に2つ目の担持薬物の予備検討を進めた結果、薬物の活性保持および歩留まり向上の点から、in vitro評価の直前に、同薬物を足場材に担持・複合化する必要性が明らかとなった。次年度は、研究代表者・分担者の所属機関だけでなく、共同研究先である北海道大学大学院歯学研究院においてもin vitro機能評価を実施する計画となっており、評価直前に薬物が両機関に納品されるよう、次年度使用額を残した。当該助成金は、翌年度分として請求した助成金と合わせ、薬物を含む各種試薬・消耗品類の購入、ならびに成果発表のための経費(英文校閲料、投稿料等)等として使用する。
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