研究課題
造山帯における部分溶融や流体は、地殻内の流動を促進させて、造山運動のダイナミクスに影響する。ヒマラヤ地殻溶融は漸進世初期から中新世初期に地殻中部で主に起こり、ヒマラヤ変成岩類の上昇過程に重要な役割を果たす(Imayama et al., 2012, 2019)。北西インドラダック地域は、海洋プレート沈み込みから大陸衝突で形成した超高圧-高圧変成岩体が分布する。これら地殻深部の部分溶融や変形機構は、超高圧-高圧変成岩類の上昇過程のみならずマントル物質の水和化や流体-岩石反応にも関連するが、その詳細は不明である。そこで本研究では、北西インドのTsoMorari地域に分布する超高圧-高圧変成岩体の鉱物化学組成分析と微細構造組織観察を実施した。その結果、岩石の上昇時に、オンファス輝石は分解して、カルシウム輝石になり、さらに角閃石とNa斜長石のシンプレクタイトが形成されることがわかった。また、基質部の角閃石とシンプレクタイトの角閃石で化学組成がそれぞれ異なる。さらに、輝石、角閃石や石英などの電子後方散乱データから、シンプレクタイトの角閃石が示す結晶方位は、オンファス輝石の結晶方位の影響を強く受けていることが明らかになった。北東インドのArunachal地域の地質構造調査を実施して、高ヒマラヤ帯内部における伸張構造を初めて発見した。これらの変形は褶曲などの逆断層運動の後に起きており、北西インドの高ヒマラヤ帯内部の変形構造とうまく比較できることが期待される。
2: おおむね順調に進展している
北西インドのTsoMorari地域に分布する超高圧変成岩における微細構造解析が進み、輝石、角閃石や石英などの電子後方散乱データが順調に得られている。特に、オンファス輝石が分解して形成されたシンプレクタイトの微細構造に関して、重要な知見を得たため。
超高圧変成岩の電子後方散乱データを補強して、国内外の学会発表で報告し、国際誌へ投稿する。また、変形-時間履歴を変成圧力―温度条件に組み合わせることで、超苦圧変成岩類の上昇メカニズムについてより具体的なモデルを構築する。さらに、高温変成岩類のチタン石のウラン-鉛年代測定と微細構造組織を解析して、上昇時の変形運動についての知見を得る。
鉱物化学組成分析に使用するための研磨粉などの消耗品が比較的長持ちしたため。これらの消耗品は、次年度に購入予定である。
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すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 2件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 2件)
Precambrian Research
巻: 397 ページ: 107183~107183
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